展望台 ページ27
『…美味しそう』
ゆるゆるの口から言葉が漏れる。
それに臆せずレギュラスも私を膝に乗せて肩に顔を埋める。
私を求めるような彼の行動はフェロモンを何倍にも増幅させるのか、それは濃い煙のように私を包む。
聞こえてくる鼓動と暖かさが伝わってくる。
傷の痛みは少しずつ薄れていって、心地よい。
いけない薬を飲んだかのようにふわふわする頭を彼に預けて、抵抗しないのをいいことにもう一度彼の香りを吸い込んだ。
ーーーーーー
廃人予備軍になりかけた私はとりあえずリセットさせようとセーターとローブを着て外に出て、お馴染みの階段を下りて談話室を通り過ぎた。
扉を守る肖像画と二言三言交わし、冷える地下階段をゆっくりと登る。
雪が降っている外を見つめて、スリザリン寮から少し遠い展望台に来ていた。
近くにフクロウ塔もあるので白い空の中からポツリポツリと茶色や黒のフクロウが向かってくる。
息を吹き出せば白い靄がゆっくりと上に登る。
柵から手を伸ばすと雪の結晶が舞い降りてはすぐに消えていった。
「A、寒くないのかい？」
昨日のことを思い出させない完璧な笑顔でセドリックは私を見下ろす。
齢１６でここまで気を回すことができるというのは、素晴らしい両親の教育の賜物なのか、彼の性格なのか。
どちらにしろ今の私にはとてもありがたい。
晒された首を隠すように私にマフラーをふわりと巻いた彼は満足そうに頷く。
白いニットのそれはこの夏訪れた彼の家の香りがする。
『セドリックこそ、寒くはないのですか？』
いくら奥まっていて風が吹かないとはいえ窓は開いている。
柵には少し雪が積もっているのだから寒くないはずがない。
「大丈夫。
日頃からクィディッチのために鍛えているからね」
ハハ、と頬を染めた。
『そうだ、第二の課題の方は順調ですか？』
バーティの昨日の言葉を思い出す。
もう課題までそう時間はない。
焦って図書館を走り回るハリーを見たのは昨日で何度目だったか…
「もちろん。
フリットウィック先生に少しアドバイスをもらってね。
泡頭呪文を習得したんだ」
長い間途切れることなく保持するのに地味に難しい呪文である。
少し心配になって見上げれば、彼の眉が少し下がっていた。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
