フィレンツェ ページ12
私の体に負担をかけない様にかフィレンツェは早足程度で森の木々を縫って歩いた。
『フィレンツェは元気にしていましたか？』
「えぇ。ただ最近は規制が厳しくなってきたのか、星を読むと色々と…」
私の仕事を全てファッジが奪い取っているからそうなっているのだろう。
家に届く資料は基本的に配属されたての新人が任される様な小さなものばかり。
もしくはファッジからの嫌がらせの様な事後報告書であった。
つまりはまぁ、ファッジが改心、もしくは辞任しないと私は魔力と魔法省への干渉力が封じられていることになる。
『…色々とありまして…
少し迷惑をかけるかもしれませんが』
「大丈夫ですよ、お嬢さん
貴女が頑張ってくれたから私たちはここまで自由にいきられる。」
優しい声がかけられる。
心を温められ、口角が少し持ち上がる。
一般の魔法使い、魔女からは私の存在は知られていない。
近しいもの、魔法生物、そして魔法省内の数名だけにしか認識されない。
表向きの管理官はエイモス・ディゴリーで、私はその影。
そんな立場の私は人に褒められる機会なんてない。
吸血鬼に自分の周りのことを守られているなんて知ったらそれこそ暴動が起こりそうですし、魔法省も叩かれるでしょう。
だからこそ、フィレンツェのその一言に救われた。
クシュ…
小さくくしゃみが出た。
少しずつ寒さが気になってきたと思えばキャロルにもらった保温魔法のアーティファクトは効力を失った様で若干濁っていた。
首から外し、ローブのポケットに直す。
少し身震いをしながらムートンの手袋の中の手をキュッと曲げた。
「もう少しです。
走るから捕まってください」
彼のウエストくらいに手を回し、もう片方の手で持っていたアタッシュケースはフィレンツェの手に奪われる。
「荷物くらい、持ちますよお嬢さん」
肩越しに微笑んで、そのまま加速し始める。
揺れる景色は飛ぶ様に変わる。
大粒の雪が降り始めたのかあたりは一層白くなってきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年1月10日 2時
