第九訓 ページ10
比較的平和に屯所生活を送っていたAが久々に注目を集めている理由
それは
「師匠!デザートに御手洗団子でもいかがですか!?」
「この後稽古ですか?俺も是非一緒させてください!」
「師匠の木刀、ピカピカに磨いてあります!いつでもお使い頂けます!」
「あ、大丈夫っす、渡鬼は録画予約済みですから!」
『…はぁ』
何でこんなことになったのか…
Aは何度目か分からないため息を吐いた
今朝、稽古中に知り合った立花という男
指南して欲しいと言われ試合をしたが、結果は試合と呼べない程呆気なかった
呆然とした立花を置いて道場を後にしたAは、稽古後の汗を流すべく風呂に入った
湯船に浸かってまったりしていた頃には立花のことなんて頭から消えていた
その後も自室で過ごして気づけばお昼時
いつかの騒動以後、食事は結局それぞれ別で済ましている
大体は外に食べに行っているようだが、少ないお金を無駄遣いしまいと自炊している派閥もある様子
Aはというと、簡単な料理はできるものの以前食堂の冷蔵庫に入れていた卵が丸々一パック無断で使用される事件が発生して以来、自炊は諦め外で食べるかインスタント系の食事で済ますようになっていた
朝食もとってなかったAの腹から盛大な音が鳴る
『昼時はどこの店も混むからなぁ…外は暑いし食堂で済まそう』
そうひとりごちて、買い置きしてあるカップ麺を手に部屋を出た
女中棟から母屋へと続く短い廊下
その廊下の角にいるそわそわと挙動の怪しい男
きょろきょろと見回していた男は、歩いてくるAと目が合うと一瞬焦った顔をした
しかしすぐに視線はAの手元へ向けられる
一拍おいて顔をあげた男…立花はパッと笑顔になって口を開いた
「師匠!食堂に行くんですね!ちょうどよかった、俺も行くとこだったんです!」
『……はい?』
ツッコみたいところは沢山ある
が、何よりもまず聞かなければならないこと
『…師匠?』
「はい!俺、師匠の弟子になります!師匠に剣を習いたいんです!」
『そんなの認めた覚えないんだけど…あれ、弟子って自分から宣言してなるものだっけ?』
「待ってください師匠!俺もお供します、師匠の身の回りのお世話は任せてください!」
何だか面倒くさい話になってきたな…
Aは内心で舌打ちをした
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作者名:あまね | 作成日時:2019年2月4日 23時