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『…は?』
︎︎目の前に差し出された匙を凝視し、ムカつくほどに爽やかな笑顔に目を戻してから声を発した。そいつは低めの声で一音奏でた私が心底不思議だ、とわざとらしく首を傾げる。
「1口食べたいんですよね?」
『馬鹿にしてんの????』
︎︎もらう側としての態度は悪いが、こいつは私よりも借りを返す側としては舐めすぎではなかろうか。私を赤子とでも思っているのか、と驚きすぎて今日一低い声を出した。
︎︎しかも。
『誰が1口だって?缶詰の罪はワンカップ分だわ』
「…強欲では?」
『なんとでも』
︎︎約束は約束だ。1口分かと確認しなかったバーボンの責任だよね、と言うとため息をつかれた。
︎︎この組織での"借り"とは、作った方が多少不利でも要件を呑まねばならないほどに重いことなのだ。彼もそれに準じて渋々と受け入れ、そのまま私に匙を向けた。
︎︎…匙を向けた???
︎︎やれやれ、とでも言うかのように肩を竦めてこう言った。
「早くしてくださいね、僕も暇ではないので」
『なわけあるか!!!!』
︎︎ワンカップ分終わるまで餌付けし続けると勝手に覚悟したらしい。そんなバーボンに驚愕しつつ、彼の脳みそに不備があるのだと納得をした。
︎︎無事にカップを奪いとり、新しいスプーンを用意してバーボンの目の前で食べ始めた。"買ってきた人"の前で美味しそうに食べるのはもらう側の義務だと思う。全くもって嫌がらせではない。
︎︎その後分かったことだが、結局私のアイスを食べたのはジンだった。キャンティが「バーボン"も"」と言っていたのはそういう理由だろう。気付いた時には空っぽだった。私が買ったスー〇ーカップよりも高いハー〇ンダッツをバーボンから強奪したため、ジンにはなにかで倍返しして、と笑顔で言うだけで済んだ。
︎︎そのお返しをバーボンへのお礼にしたことでジンとバーボンの仲を深める手助けをし、ドヤ顔で「これがいい事よ!」と言うとバーボンに苦笑いされたのはまた別の話だ。
✎︎______________
1話で終わる予定でしたがバーボンとの掛け合いで筆が乗りました。
今回はアイスと缶詰が絡んでいるのでバーボンに対して当たり強めですが、いつもは普通です。
缶詰についてですが味が染み込んで美味しいらしいです。賞味期限は少し切れても美味しく食べられますが、実践はしないでね☆
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時