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︎︎やはり自分の息ではなかったのか、と顔を顰める。
︎︎相手は拳銃を構えようとだらりとした腕を上げていき…。
︎︎それを2発の続いた音が阻止した。
︎︎風で煽られた立て看板のように、残党は目の前で後ろへと倒れる。
「おい、隠れるのも満足にできねぇのか」
︎︎振り返れば不機嫌そうなジンが立っていた。
……
︎︎苛立っていた。その原因はこのなんとも思っていない表情をしたAにある。
︎︎まず前提として俺はこいつの任務を増やしたくない。信用できる人間を失いたくないからだ。
︎︎そして裏の世界に染まりきっていないこいつの無邪気さも失わせたくない。
︎︎反してこいつはこっち側に染まりきろうとする節がある。"普通"に憧れている癖に情を持ちすぎて自ら闇へ進もうとする。
︎︎例えばさっき。
︎︎しかし、こいつは食い下がった。
『その初仕事が
「(お前の専門外の)任務を与えた記憶はねェ」
︎︎俺の意に反してこいつは闇へ突き進むことを厭わない。いくら言っても変わらないだろうその考えに苛つくが、それよりも。
︎︎ふくらはぎの外側に手を添えているのに眉を顰める。
︎︎会話の前にモールス信号で『おかしい』と踵を鳴らした側の足だ。取引相手が潜んでいるからだと思っていたが、まさか…裾から拳銃を取りやすくするために下へ落としたのだろうか。今考えれば"いざとなれば加勢する"なんて、武器があるから言えることだ。
︎︎拳銃の所持を知らなかったが、知っていても許さない。…ベルモットの仕業か、と舌打ちした。
︎︎しかも。銃に手をかけていたのになんとも思っていなそうな顔が、闇に染まっていない無邪気さが消える気がして、俺の胸をざわつかせた。
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作者名:ねむとぅ(ー3ー) | 作成日時:2024年2月9日 16時