泡禍の遺物2 ページ44
石原さんに呼ばれて、晩餐会の会場である大広間に向かっていた時だった。
「あ、A姉ちゃん!」
子供特有の甘く高い声に、振り返る。そこには、昨日随分とお世話になったコナン君がいた。
『成る程。コナン君が言っていた、また明日って、こういう事だったのね。』
私が一人納得していれば、彼はニッコリと笑う。コナン君の背後に立っている毛利さんとの挨拶もそこそこに、彼の隣にいる彼女へと視線をむけた。
『ーーーもしかして、先日事務所に伺った時に聞いた…毛利さんの』
「娘の毛利蘭です。貴女のことは父とコナン君から聞いていて、私も一度会いたいなって思っていたのよ。まさか今日こんなところで会えるなんて。」
『初めまして。緑川Aです、毛利先輩。』
「…あら、もしかして一年生?」
『はい、学校は帝丹じゃないですが』
大人っぽいから同い年かと思っちゃった、と彼女は微笑んだ。
「ーーーねぇねぇ、A姉ちゃん。どうしてこれからご飯を食べるのに、いつものバイオリンケースを持ち歩いてるの?お部屋に置いてこなかったの?」
「晩餐会と言やぁ生演奏…あ!Aさん、もしかして今日の晩餐会に演奏者として呼ばれた、とか。」
コナン君と毛利さんの言葉に苦笑する。奏者として呼ばれたわけではなくギリギリまでバイオリンの練習をしていただけだ、と伝えれば、コナン君に呆れられたような目で見られてしまった。こんな時まで練習かよ、と視線で突っ込まれたような気がするのだが私の気のせいだろうか。
「それじゃ、貴女も招待状を?」
『あ、いえ。私はーーー』
「彼女はこの奇妙な晩餐会における僕のパートナー……同伴者ですよ、毛利さん。」
白馬さん、だった。勿論彼のその言葉に、嘘はない。
『ーーーあ、あの』
けれど、言葉と同時に肩を抱かれる感覚に顔を向ければ、目と鼻の先に白馬さんの不敵な笑みがあった。海外の学校に通っているらしい彼からすれば慣れているのかもしれないけれど、思った以上に近いその距離に私は少しだけ身構えてしまう。こういうシチュエーションが好きなのだろうか、キャーと毛利先輩から歓喜の悲鳴が溢れた。
「ーーーケッ。ガキが生意気な。」
毛利さんの眉間に皺が寄っていた。
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