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「君達を招いたのは、この館に眠る財宝を探し当てて欲しいからに他ならない。」
大広間の上座には既に、この晩餐会の招待主(ホスト)ーーー"神が見捨てし仔の幻影"を名乗る者が座っていたが、顔面は黒布で覆われていた。その瞼からは妖しい閃光が零れている。
「ーーーさぁ、名札の席に」
気味の悪い彼に促されながら、招かれたゲスト達は次々と着席していった。私は案の定、白馬さんの隣だ。晩餐会には、白馬さんや毛利さん、先程ぶつかってしまった大上さんの他に三人の探偵が招かれているようで、元検視官であった探偵の槍田さん、ハードボイルド探偵と呼ばれる茂木さん、老婦人探偵として有名らしい千間さんであることを白馬さんが教えてくれた。
『ーーーひっ!』
突如としてけたたましい爆発音が聞こえたため、思わず身体を竦ませる。ホストである彼は何としてでも財宝を探し当ててもらいたいのか、ゲストの車や唯一の渡橋を爆破することで退路を奪ったことを告げた。ここではスマホは使えず、外部との通信は絶望的な状況らしい。
「ーーーいけすかねェな。」
そのような中でまず一番に席を立った茂木さんは、ズガズガと上座に足を進めると勢いよく覆面を剥ぎ取った。覆面の下から現れたのは−−−−無機質な白いマネキン。
「ーーー念の為、食器やカトラリーを自身のハンカチで拭いてから使った方が良い。」
予め決められた席で食べるのは抵抗がある、との意見から席替えをすることになった。結果として私は左側に大上さん、右側に毛利さんと彼らの間の席に落ち着いたのだけれど、向かい側に座る白馬さんからの忠告を聞いて一気に食欲をなくした。
「ーーーパテのお味はどうかね。」
心持ちゆっくりめに前菜を食していると、大上さんに話しかけられる。美味しいです、まろやかだけどコクがあって…と言えば、彼は満足そうに頷いた。
「パンやクラッカーと一緒に食べると、さらに絶妙な味わいになる。」
『ーーーへぇ。』
「ーー実は厨房にはまだパテの余りがあるんだが、どうだろう。今日の夜食にでも部屋に持っていかないかね。クラッカーも用意してある。」
『やー…でも、こんな状況ですし…今回の料理でお腹いっぱいになると思うので…』
「ーーー大上さん。いくらAさんが美人だからと言って、あんまり女子高生をナンパしちゃダメっすよ。」
毛利さんの助け船にホッと安堵する。大上さんはフンっと鼻息を零して皿の残りを平らげていた。
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