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大人が自分一人だということもあり、随分と熱心に研究してくれたらしい。
「.......向こうに着いたら、身体を休ませなきゃダメよ?」
「そうだぜ、ちゃんと寝てろよな!」
「僕達のことは心配いらないですから。」
歩美ちゃん達の言葉にコナン君は空笑いをした。どっちが保護者か分からねぇな、と言う彼の呟きが聞こえてしまい、思わず吹き出してしまう。
『ーーー阿笠さん、スキー場では私がちゃんとこの子達を見てますので安心して休んでください。風邪、拗らせちゃうと厄介ですし。』
「........すまんのぉ、A君。」
『いえーーー早く治ると良いですね。』
それから数分後、バスは米花三丁目のバス停に留まった。思いの外ぞろぞろと乗客が乗ってきたため一度会話が途切れる。
「ーーーどうした、灰原?」
コナン君の声と言葉に、席の頭上から覗き込めばフードを被り込んだ哀ちゃんが小刻みに震えているのが見て取れた。
「ーーー江戸川くん、席を替わって。私を、隠して」
事情は分からないけれど、ただならない様子の哀ちゃんを見てしまえば、放ってはおけなくて。彼女がコナン君と席を替わろうと立ち上がった瞬間に、抱きあげた。彼女から小さな悲鳴があがったけれど、彼女の顔も胸元で隠してあげているためか、くぐもって聞こえる。
「ーーーお姉さん?」
『哀ちゃん、預かるね。』
丁度ガムを噛んでいる女性が後部席まで来ようとしていたため、コナン君に返事をするや急いで自身の席に戻る。どうやらこのバス停から乗る客は思った以上に多いようだ。彼女もどういうわけか隠れたがっているようだし......哀ちゃんには悪いけれどそのまま抱っこさせてもらうことにした。
『ーーー体調、悪いわけではないんだよね。』
温もりはあるけれど、発熱している感じではない。子供とはいえ異常に速い心音に心配になるが、私の問いかけに小さいながらも頷いてくれたことにホッとした。未だに震えが止まらない様子の彼女の背中を、秀一さんにしてもらったようにポンポンと優しく叩く。
突如、ゴホゴホと咳をする声が頭上から聞こえた。
『ーーーっ!』
私の驚きが哀ちゃんに伝わったのだろうか、彼女の私の両肩を掴む力が強くなった。
「ーーーすみません、お隣よろしいですか?」
マスクをかけているためか、秀一さんの言葉がいつもよりも不明瞭だ。異常に丁寧な言葉遣いにハッとすると、彼が座れるように隣に置いていたバッグを前席のフックにかけた。
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