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「この度は家内のためにわざわざお越しいただいて…なんとお礼を申し上げたら…」
「お礼なんて水臭いじゃないか…それにしても、今回のことは残念だったねェ。」
「はい、突然のことで…あの世にいる家内が一番驚いてるでしょうね。」
「……アンタはあの子に何も聞かされてなかったのかい?」
「…え?」
「…いや、なんでもないよ。」
お登勢さんはそれ以降口を噤んだため、水野のお爺さんは首を傾げながらも言葉を続けた。水野さんは人と距離を置くところがあり、なかなか店先に出られなかったこと、それでも家事はしっかりとやってくれてニコニコの笑顔の絶えない優しいお婆さんだったことを。
ほろりと水野のお爺さんが涙を流すとお登勢さんも眉間にしわをよせる。銀さんは頭をかきながら、しゃがみこんで水野さんと目を合わせた。
「銀さんも来てくれてありがとう。」
どうやら、銀さんは水野のお饅頭屋さん常連だったらしい。銀さんはAちゃんを手招き、銀さんに呼ばれたAちゃんは素直にとかけ寄っていった。
シャラン
それと同時に微かな鈴の音も鳴る。
『ヒク・・・んう”・・グス・・・』
水野さんの涙に触発されたのか、先程から泣きじゃくっているAちゃんに子犬は“キューン”と鳴きながら頬をぺロリと舐めた。その様子に銀さんは苦笑すると、Aちゃんから子犬を受け取って水野さんに渡す。思いもよらなかった子犬の登場に、水野さんは目をパチクリとしていた。
「銀さん…この犬は?」
「……これはアンタんとこのバァさんが、三日前に俺達に依頼してきたもんだ。」
「三日前…お菊が…?」
「あァ、代金はすでにもらってるぜ?」
水野さんは驚きで再び目を丸くした。
「…銀さん、本当にお菊が?」
「あァ。」
銀さんの肯定に、水野のお爺さんは一瞬身体を強張らせたけれど、暫くして口を開いた。
「家内は…お菊は、犬アレルギーなんです。犬に触れると、酷い蕁麻疹がでてしまって。」
「そんなにひどい犬アレルギーなら、なんでバァさんは俺たちにこんな依頼を?」
銀さんの言葉に神楽ちゃんは、昨日テレビでやっていたはぐれ刑事の仕草のように顎に手をあてた。
「うーむ、謎アル。これは事件の匂いがするネ。」
「神楽ちゃん。でも、お菊さんが何者かに襲われたのは事実だし何かこれには深い理由があるのかも。」
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早桃 - めっっっちゃ好きです、、、。これは神作品に出会ってしまったぞ!続きが気になりすぎますゥ゛ゥ゛ゥ゛! (2022年4月5日 23時) (レス) @page31 id: 636f4996a9 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - ナツメさん» よろしくです!! (2020年6月11日 7時) (レス) id: adf0bec428 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - printemps(プランタン)さん» プランタン様、コメントありがとうございます!更新を喜んでいただいて嬉しいです。今後ともよろしくお願いします!! (2020年6月11日 2時) (レス) id: a56d032004 (このIDを非表示/違反報告)
printemps(プランタン)(プロフ) - わーい!更新されてら (2020年6月9日 9時) (レス) id: adf0bec428 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - 常夏さん» 常夏様、返信が遅くなり申し訳ありませんでした。コメント、ありがとうございます!!今回漸く更新しました。スローで申し訳ありませんが、頑張って今後も更新できればと思います^_^ (2020年6月9日 4時) (レス) id: a56d032004 (このIDを非表示/違反報告)
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