ヒーローのち恋人 1 ページ34
暫くそのまま早歩きなバスコに運ばれていたが、段々そのスピードが緩まり、人気の無い廊下で止まった。
「A…その…すまないが上着で前を隠していてくれないか…。」
「え…」
肩から羽織っただけだから胸元は衣装が見えている。透けるシースルー越しに水着の様な服のせいで、谷間がくっきり主張していた。
「ご、ごめん!…でも、腕動かせないよ?」
腕を動かそうとすれば、しがみついてる故に確実に落下するだろう。
えーっと と手を動かそうと試みるが困った様に笑って返した。
「はっ!わ、分かった、見ないようにするから大丈夫だ!
気にせず掴まっていてくれ。」
「…。」
ふふっと笑ってしまったものだから、バスコが不思議そうな顔をする。
「ほんと大胆なんだか純粋なんだか。」
「…仕方ないだろう。」
そう言う彼は少し顔を赤らめた。
「そうだね、バスコは思い立ったらすぐ行動しちゃうもんね。」
ふふっと小さな笑いが止まらなくて、なんだか温かい気持ちになる。
気付いたらバスコはじっと此方を見ていて、抱える腕に力が入っていた。
「ん、どうしたのバスコ、怖い顔してる。」
私の問いに何故か答えずに、ずっと怖い顔のままだ。
そしてゆっくりとお姫様抱っこから下ろされた。
「?バスコ? さっきからどうし…」
急に視界が白くなった。
それがバスコのタンクトップだと気付いたのは、
刺繍のある立派な腕にぎゅうっと抱きしめられ、頭を優しく撫でられてからだった。
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作者名:まんちかん | 作成日時:2021年2月3日 17時