ー参ー ページ13
そういうわけで、たとえ誰かが私の名前を知っていようと、同姓同名の人がいようと、私はその名前を認識できず、返してもらうまでは本当の名前を知ることもできなければ思い出すことも出来なくなった。
「…名前がないってどんな感じ?」
五条に引き取られて、あてがわれた場所は別邸の小さな屋根裏部屋のようなところだった。これからは五条家の手足となっていくわけだが、悟のお気に入りということで、殆ど外には出れないものの暫くはここに置いてくれるらしい。
一体何から逃げてきているのやら、悟はちょくちょく窓から訪ねてくるようになった。お坊ちゃんが姿をくらませて大丈夫なのかと聞いたことがあるが、いつものことだと返された。
きっと使用人たちがあちこち探しているのだろうが、嫌悪からか、はたまた禁じられているのか分からないが、私の部屋には入ってきたことはないので案外いい逃げ場になっているのかもしれない。
『ふわふわしてて、なんとなくしっくりこない感じ。』
「へー。」
初めてあった頃は敵なしの傍若無人であったが、その頃になると年相応の寂しさ甘えたとか、普段は出せないのだろう感情を見せてくれるようになった。とは言っても、自分勝手なのに変わりはないのだけれど。
「ーーーー」
『……?』
「…せっかく助けてやったんだから、死ぬなよ、おまえ。」
目を逸らしながら何処か寂しそうに、でもぶっきらぼうにそう言った悟がなんだか可愛くて、私を見てくれる言葉が嬉しくて。
『じゃあ、さとるのために生きるよ。約束ね。』
__昼に想い、夜に夢を見る。
それは幼い私が、自らに課した縛り。
生きる上で、あなたを想わないときはないという、重すぎる愛の
力も、命も。全て、あなたのために使おう。
それは二十数年経った今でも変わらない。
私がなんの躊躇もなく言うものだから、悟は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そこまでしろとは言ってねぇよ!」
『ダメなの?わたしは結構さとるのことすきだよ。』
我ながらかなりの黒歴史である。それでもまぁ年相応のよくあるような戯れではあったのだが、まだうぶだったらしい悟は私の言葉に顔を真っ赤にして叫んだ。
「は!?気持ちわるっ!!」
手加減なしでデコピンしておいた。
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梅枝(プロフ) - 氷雨霰さん» 返信が遅くなってしまい大変申し訳ありません。誤字指摘いただき大変助かりました、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
梅枝(プロフ) - ぱるむさん» 返信遅くなってしまい大変申し訳ありません。そう言っていただけて嬉しいです、ありがとうございます! (2022年3月25日 22時) (レス) id: 810501db12 (このIDを非表示/違反報告)
氷雨霰 - すっごい面白かったです!!あと、わざとだったら本当に申し訳ないんですが…題名の「呪術士」、もしかして「呪術師」の変換ミスかもです! (2020年12月13日 1時) (レス) id: 7e61cd56ff (このIDを非表示/違反報告)
ぱるむ - めっちゃ面白いです!応援してます!頑張ってください! (2020年12月9日 21時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅枝 | 作成日時:2020年11月24日 0時