銀色の災いは炎の人に恋をする (ページ5)

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甲板にてsideA ページ5

『あなた、生きてますか？』

不甲斐ないことに今日も白ひげに負けて海に落とされた。海水を飲んだせいで朦朧とする頭に声が響いた。
ペチペチと肩を叩かれる。
目をゆっくり開けて息を飲んだ。

綺麗な黒髪に、綺麗な青い目。
こんなに綺麗なやつが白ひげのとこにいたなんて知らなかった。と思ってると、タオルが投げて寄越された。

『手当ての時間です。まずは身体拭いてください』
「そんなのいら…」
『うるさい』

遮られて綺麗な目で睨みつけられると何故か何も言えなくなった。
仕方ないから頭をガシガシ拭く。
その間に彼女は救急箱からガーゼを出して消毒を始めた。

伏し目がちなその顔と手際に見惚れていると彼女が口を開いた。

『あなた、ほんとに懲りないですね。あなたが挑んでる相手は四皇ですよ？ルーキーにどうこうできるとは思えないですが』

少しムカついた。
たしかに四皇はすげえ強いけど、一度向き合ったらおれは逃げないと決めてる。今更尻尾巻いて逃げるわけにはいかないし、それに

「四皇だからおれが首を取ったらおれの名が世界に轟くんだろ」

ガキのころ、3人で誓った夢。
サボがいなくなってからその想いはますます強くなった。
サボのとこまで名を轟かせたい。強くそう思っていた。

彼女がおれを見つめていた。
そして、ふっと口の端に笑みを浮かべて立ち上がる。

『そうですか、なら勝手に頑張ってください。そういう人、私嫌いじゃないですよ』

そう言って立ち去ろうとする彼女を気づけば引き止めていた。

「もし、おれが白ひげの首を取ったら俺ときてくれないか？」

彼女の目に混乱が浮かぶ。
何してるんだ、おれは。
いきなり引き止めてこんなこと言ったら引くに決まってる。
バツが悪くなって俯いた。

「悪い…」
『いえ、気にしないでください』

そう言って彼女が服を引っ張った。
けど、おれは離したくなかった。
何か、言わなきゃと話題を探す

「おれは、エースだ」

信じられないくらいに間抜けなセリフだった。
それでも彼女は柔らかな笑みを浮かべて答えてくれた

『そうですか、私はAです』

A…A。
綺麗なその響きをおれは頭に刻む。
彼女はもう船室に入ってしまっていた。