銀色の災いは炎の人に恋をする (ページ4)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:9,118 hit

甲板にてページ4

『あなた、生きてますか？』

ぐったりしてるその子の顔を覗き込んだ。
跳ねた黒髪にそばかす。ふむ、顔立ちもくっきりしていてなかなか好みだ。
ナースのお姉様方にさんざんイケメンの雑誌を見せてもらったから、イケメンの定義はわかってるつもりだし、好みの男性のタイプというのも一応持っている。

筋肉隆々とした肩をペチペチ叩いてみる。
おお、やっぱり硬い。

何度か叩いてみるうちにその子が、少し唸りながら目を覚ました。
切れ長の目は可愛いというより男らしい

照れそうになったのでタオルを投げた。

『手当ての時間です。まずは身体拭いてください』

彼は少し鬱陶しそうな声をあげた。

「そんなのいら…」
『うるさい』

遮ってちょっと睨みつけると言葉を呑んで、まだ不満そうな顔をしながらもおとなしく髪をガシガシ拭きはじめた。
私はガーゼを手にとって消毒を始める。
やりにくいのは物珍しそうに彼が私が手当てする様子を見てくるからだ。

『あなた、ほんとに懲りないですね。あなたが挑んでる相手は四皇ですよ？ルーキーにどうこうできるとは思えませんが、わかってますか？』
「四皇だからおれが首を取れば一気におれの名が世界に轟くんだろ」

私は思わず顔を上げた。セリフは時々絡んでくるつまらないチンピラ海賊のそれだけど、声が違う。質とかじゃなくて、響き方が。質もいいけど。
しっかりした信念があって、なるほど簡単に折れないわけだ。と納得した。

『そうですか、なら勝手に頑張ってください。そういう人、嫌いじゃないですよ』

立ち去ろうとすると服のそでをつかまれた。

「もし、白ひげの首を取ったら俺ときてくれないか？」

いや…いやいやいや…

待って、待って。今のどこにそんな展開のフラグがあったんだ？
私、手当てしただけですよね？
混乱しながら彼を見つめることしかできない。

彼は少し俯いて、「悪い」と謝った。

『いえ、大丈夫ですよ』

服を引っ張って離してもらおうとするけど、まだしっかり掴まれて離してくれそうにない。

「おれは、エースだ。」

真剣な目で見つめられる。
私の名前を知りたいのだろうか。
微笑んで私も自分の名を口にした。

『そうですか。私はAです』