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目の前に佇む人間に、私は視線を逸らすことが出来なかった。


「A」


「………」


優しく微笑み掛けてくるテミンは、研究所で会った時と同じように手を差し伸べてくる。


「迎えに来たよA。今度こそ、僕と一緒に来て」



私は貴方を知らないのに。
貴方は私を知っている。

なぜ、貴方はそこまでして私をここから連れ出そうとするのか。




「…わからない。どうして、こんな」



私の問いにテミンの差し伸ばされた手がぴくりと動きを止め、ゆっくりと引かれる。



「…全部君の為だよ」



そう口にする彼は、悲しそうに小さく笑っていた。



「よく聞いて、A。君が今いる組織は、世界の為に戦う正義の味方の集まりなんかじゃない。寧ろその逆だ」


「……逆?」



テミンの真摯な瞳は嘘偽りを言ってないように思えてしまい、頭が混乱する。



「組織の奴らは新しく世界を作り変えようと目論んでる。多くの能力者や一般の人を犠牲にしてまで、その計画が着実に進んでいる。だけど最終的な計画の為には君が必要なんだ。A、君の能力が…」



テミンの言ってることは、私の理解には到底及ばなかった。
あぁ…上手く頭が働かない。

組織が?私を?




私の能力を?



それ以前に、多くの人を犠牲に新しい世界を作る?




どういう、こと?







「世界を作り変えることの、何がいけない?」





感情のない淡白な声でそう言ったのは、ジョングクくんだった。
私は彼の言葉に瞠目する。



「それで犠牲が出たとしても、それは新しい世界への礎となる。誇りに思うべきだよ」


「ジョングク…くん?」


何を言ってるの。と口にする私にジョングクくんは、何が?と純粋な双眸で私を映す。
その問いは、本当に何がいけない事かわかっていないような、そんな感じで…私は静かに息を呑んだ。



「…随分自己中心的な考え。"あの人"の飼い犬だけあるね」



キツくジョングクくんを睨み付けるテミンは銃口を向ける。



「"あの方"の望む世界は俺達の望む世界だ。それを邪魔する存在は誰であろうと許さない」


「…僕だって僕の大切なものを傷付ける存在は誰であろうと許さないよ」



そう言ってテミンが引き金を引くのと、ジョングクくんが走り出すのは同じだった。

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yui(プロフ) - ルカさん» ありがとうございます!それは誰が為に 5公開しました。 (2020年5月22日 3時) (レス) id: b7a9992a65 (このIDを非表示/違反報告)
yui(プロフ) - 伊狐さん» ありがとうございます!それは誰が為に 5公開しました。 (2020年5月22日 3時) (レス) id: b7a9992a65 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ - いつも読ませていただいてます。とっても面白いです。パスワードを教えていただきたいです。今後も楽しみみしてます! (2020年5月22日 2時) (レス) id: 7b2d92024a (このIDを非表示/違反報告)
伊狐(プロフ) - この作品が大好きでお気に入りです!パスワード教えてください!これからも応援しています! (2020年5月22日 2時) (レス) id: c76b536d3e (このIDを非表示/違反報告)
レオナ(プロフ) - ジュンピ落ちがいいです!これからも頑張ってください! (2020年5月11日 23時) (レス) id: 4de243fabb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yui | 作成日時:2020年3月30日 22時

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