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しばらくの沈黙が続いた。
そんな中、尾浜は一つの言葉を脳内に募らせる。
それは
……いやもうそれ告白じゃん、何言ってんのコイツ
これに尽きた。
少々口が悪いのはAに似てしまったのか、無意識に浮かんでしまったためなんとも言えず。
その沈黙をぶち壊すようにAは唖然とした顔をしながら久々知に一言言った。
「気持ち悪いこと言ってんじゃないわよもぎ取るわよ」
Aはそれを言うなりふいっと久々知から顔を背ける。
「気持ち悪い……?」と久々知は考えるように言葉を復唱したが、少し考えるうちに自分の言っていたことに理解が追いついたようで慌てて顔を真っ赤にして手を振るった。
「待て待て待て!誤解だ!女を殴るなんてしないって意味だ!」
誤解を解くべく、必死に声を上げる久々知の顔を見ないようにAは首を捻り続ける。
「五月蝿い」「静かにして」「寄らないで」とAは久々知に冷めた言葉を浴びせるが、久々知はそんなことは知らないように必死に言葉をかけ続けていた。
そんな時、がさりと側の茂みが揺れる。
尾浜と久々知が慌ててそちらへと視線を向けると、そこからひょっこりと傷だらけの忍たまが顔を出した。
「狼煙はここからかい!?Aちゃんは無事!?」
「「善法寺伊作先輩!?」」
傷だらけの忍たま……それは中在家長次ではなく、不運で傷だらけになった伊作であった。
伊作は尾浜と久々知に対して「どいたどいた」と投げるように言えば、Aへと走り寄る。
恐らくAのことが心配すぎるあまり、考えて発言ができなくなっているのだろう。
後から「さっきは酷いこと言ってごめんね」なんて言われそうだが、一旦それは置いておいて……
未だ久々知たちに背を向けたままのAに伊作が走り寄り、そっと肩に触れながら呼びかける。
「大丈夫?名前は言える?」 「……高嶺A」
「よし、どこか怪我は?」
「足を少し捻りました」 「わかった、見せてみて」
妙に大人しく伊作の質問に返答しているAに違和感を持った久々知と尾浜。
だが、次の伊作の言葉を聞くと、久々知はこれからしばらくこれのことで悩む事となる。
「……あれ、Aちゃん顔打った?」
「…ってません」
「嘘だ、赤いよ」
「打ってないったら!」
……顔が赤い?あの高嶺Aが?
Aが急に騒がしくなり、足を見ている伊作の顔面目掛けて蹴りを入れ出す。
伊作はそれを容易く受け止めながら「わっごめんったら!」と言っていた。
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作者名:タジロ | 作成日時:2023年10月3日 9時