不審者 ページ15
それから数日後のことだった。
放課後に雑務をさせられていた私は他の生徒より十分程遅くに校舎を出た。下駄箱あたりで何か妙な雰囲気を感じて辺りを見渡す。なんか、やけに騒がしいというか……。
うるさいってほどではないんだけど、コソコソなにかを話してる声が異常に多い。
不思議に思いながらも靴を履き替え校門へと向かう。
―――ん?
校門のあたりに何か人が立っている。セーラー服を着ていて、艶やかな黒髪。
そして……ガタイが異様に良い。
何だあれは、本当に女か?
眉をしかめていると、近くにいた生徒のコソコソ声がきこえてきた。今度は内容もしっかり。
「あの人、男性よね……」
「他校性ですわよね。何故あんな姿でこんなところに」
「先生を呼んだほうがいいのかしら」
この調子なら、誰かが教師を呼んで解決しそうだな。私が特に何かをする必要はないだろう。
そう思って校門を抜けようとしたときだった。
「おっ、待っていたぞA」
その他校の女子(?)生徒にクソでかい声で名指しで呼び止められたのは。
一瞬無視して逃げようとも思ったのだが、その顔に見覚えがあったので足をとめてしまった。……これはさすがに無視するわけにはいかんだろう。
「桂さんですか」
「あぁ!久しいな!!」
やはりか。化粧までしやがってたので分かりづらかったが、コイツは桂小太郎か。相変わらず頭がおかしい。
そんで、コイツが私の名前を舞台演劇ばりの素晴らしい発声で言ってくれたおかげで「雨ノ宮さんのお知り合い?」「まさか」「でも今名前を…」などと少し都合の悪いことをコソコソといわれている。
桂は全く気にしていないようだが。KYめ。
「というかお前なんだその妙な喋り方は!気持ちわ……」
「そんな格好でなんの御用ですか」
笑いながら話す桂の言葉を遮る。コイツは私の小学校時代を知っているのだ。これ以上余計なことを言われるわけにはいかない。
突然の厳しい声に桂は固まっている。
「生徒達が怯えています。すぐにお引き取りいただければ大事にしません」
「お、おい、どうした?変だぞA」
「貴方もこんな格好でこんなところに立っていたなんて学校に通報されたくないでしょう」
そう言って桂を押して校門から離す。彼は戸惑いつつ何かごちゃごちゃ言っているが付き合っている暇はない。
とにかく余計なことを言われる前に、この男をここから引き離さなければ…!!
様子を心配そうに見る生徒達「この件はこちらでやっておきますので、皆さんはどうぞ下校してください」とだけ言って、桂を押しながら速足で校門から離れた。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時