【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ16)

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第四十六話ページ16

「気安く、名前で呼ばないで頂戴。」

とっさに口走る。

自分でもパニックになった隼総相手に、冷たいなと思う。

でも、本心だ。

私の名前は、私が呼んでもいいって思った相手にしか呼ばせない。

それほど、私にとって自分の名前は特別なの。

隼総はぶつぶつ何かを呟き、目を隠したまま泣き続ける。

京介も、蘭丸も戻ってくる気配がない。

彼も私の腕を離さない。

隼総を見ていると、心が苦しくなる。

…なんでこんなにも彼が気になるの。

好きじゃない相手なのに。

私は泣きじゃくる隼総の頬に手を添えて、隼総と目線を合わせる。

「…でも。あんたが落ち着いたら、私の事を名前で呼ぶ権利を上げるわ。

だから早く落ち着きなさい。あなたはいい子だから私の言う事、聞けるでしょう？」

上から目線で言い放つ。

だって、立場は私の方が上だもの。

彼は私の執事。私は彼のご主人。

対等になんて、なってあげない。

隼「う、うぅ…」

隼総の耳に届いてるのか分からないけれど。

隼総はまっすぐ私の目を見て、少しずつ自分で落ち着かせようと深呼吸を始めたりした。

「そうよ、そのままゆっくり呼吸して。

やれば出来るじゃない。いい子ね。」

ちょっとずつ、ちょっとずつ落ち着いてくる隼総

私は微笑んで隼総の頭を撫でる。

隼総も、京介と同い年だっけ。

フィフスセクターで厳しい訓練を受けていたから、彼もまた大人びたように見える。

でも、やっぱり子供で。

だけど、彼の放った言葉が引っかかる。

『愛』とは。なんなのか。

私にも、詳しくは分からないけれど。

でも、一緒に居て心が落ち着ける人との間にあるものが愛だと思う。

なんて。簡単に彼に言えなかった。

「よしよし、いい子いい子。」

まだ少し落ち着けていない隼総の頭を撫でながらそう呟いた。