便乗って素晴らしいですよね 【伊弉冉一二三】

流されて二十二回目 ページ23

休憩も終わり、デスクに戻る途中の道すがら、真美と駄弁る。
昼食から戻ってきた人が多く、廊下はかなり混んでいた。

真美は片手に握ったコーヒーをグイっと飲み干しながら言う。

「にしても、あれだなぁ。もう一回行きたいなぁ、ホストクラブ。」
「…本気で言ってるわけ？」

至って平然と言う彼女に、訝し気な表情を向けざるを得ない。
私はあんなところもう二度とごめんだ。嫌なことばっかり思い出させられて、いいことなんてほとんどなかった。しいて言うなら、連絡先が一つ増えたくらい。

「本気本気。私もう一回ハルトくんに会いたいなぁー。」

そういって彼女は手を伸ばし、持っていた紙コップをごみ箱に投げる。
するとーー。

「いたっ！」

投げ捨てた紙コップが、近くを歩いていた男の人にあたってしまった。うわぁ、痛そう。
するとその男の人は、怒るかと思いきや、

「す、すすす、すみません！俺みたいな人が紙コップにあたってしまい…！
あぁ、これできっと俺はこの会社を首になるんだ…それで仕事を無くして、一二三に迷惑をかけ…あぁ、全部俺のせいだ。俺のせい俺のせい俺のせい…。」

なんか物凄い疑心暗鬼に陥らせてしまった。
真美も困惑した表情で紙コップを拾う。

「あぁ、いえ…。投げた私が悪いので、こちらこそごめんなさい。アハハ…。」
「ひ、ひぃ…！謝らさせてしまいすみませんんん！」


あ。
この人、どこかで見たことあると思ったら、営業の時に一回だけ仕事したことある人だ。

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