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洗面所でバシャバシャと水を被りながら、私は一人焦燥に駆られていた

男の人のボスでさえあんなきっちり身だしなみを整えているのに、私ときたら家の中では化粧っ気なんて全然なくて。なんだか恥ずかしい、女としてどうなんだろう

そもそもボスに女として見られているのだろうか。

私は力強く顔にタオルを押し付ける。男の人であんなに綺麗なのに、今更私が頑張って化粧したところで虚しくなるだけだ。諦めよう

私は開き直って脱衣所から出てリビングへ戻ると、ボスがソワソワとしながら私を手招いた

「どうだ?問題ないか?」

「すっごく似合ってますよ、ボス。羨ましいなあ。口紅の色も綺麗」

そう褒めるとボスは嬉しそうに笑った。かわいい

「あ、そうだ……ボス、おはようございます」

昨晩と同様に、私はボスの両頬に控えめなキスを贈る。ボスは一瞬キョトンとして、その後すぐに「ああ、おはよう」と私の頬に2回キスをした

「はあ、なんか恥ずかしいですね。ボスは平気ですか?」

「そう、だな…少し気恥ずかしい感じではあるが……嫌ではない」

「へえ!そうですかっ!」

悔しい、私ばっかりお子ちゃまだぞ。ボスだってあんまやったことないって言ってたのに。物理的に距離の近いまま、私はこの空気をどう変えるか悩んだ

「……特に何もないし、ご飯食べたら勉強でもしますか」

「ああ、そうしよう」

……

私は昨日買った物の入っている袋を全てテーブルの上に置いて、未開封の文具を全て取り出すようにボスにお願いする

「まずはボスからやりましょうか。平仮名」

「ああ、頼む」

「読めはするんですよね?じゃあとりあえずテキストの通りになぞってみてください。あ行の部分が終わったら一旦見せてくださいね」

「わかった」

自分より頭のいい人に物を教えるなんて、ちょっと緊張する。ボスは『あ』の文字をスラスラと書き込んでいるし、私の教えることなどないのではないかと思う

私はコップにお茶を注いでボスの横へ置いた。ボスは一度手を止めてお礼を言ってきたけど、私は気にしないでと勉強を再開させる。

「ボスは文字は読めるんですよね?自分で書いた文字も問題なく読めますか?」

「ああ……クセなどは気になるが基本はどんな文字でも読めるとは思うぞ」

「そっか、じゃあ自分で書いてみて理解できるならオッケーって事だね」

お、の文字を無事書き終えたボスの手元を、私も一応目を通しておこうと覗き込む

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twelve(プロフ) - 滅茶苦茶ぶっ刺さりました。大好きです。 (2019年8月3日 1時) (レス) id: 3b57c71271 (このIDを非表示/違反報告)
メイム(プロフ) - 更新ありがとうございます!! (2019年7月17日 21時) (レス) id: 89648f6823 (このIDを非表示/違反報告)
メイム(プロフ) - 凄く面白いです!!ディアブロ可愛すぎる…! (2019年7月13日 22時) (レス) id: 89648f6823 (このIDを非表示/違反報告)
味噌鯖 - 面白いしボスも夢主も可愛くて大好きです!頑張ってください! (2019年7月12日 22時) (レス) id: f633d0accd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しそし | 作成日時:2019年7月8日 20時

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