【小説版】悲劇のブラックスワン (ページ30)

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予兆、そして予感ページ30

「う～っ、お腹すいた!」
「何食べようか?」
「今日ノ日替わりランチは……カツ丼ダ!」
「私はオムライスかな」
　達人高校の食堂前には数名が集っていた。
　悲劇のブラックスワン高校生組。朱凛、麻音、涙、愛那、冬乃、桜花、弁籟だ。一同は冬乃の両親を殺した強盗の正体について話そうと集っていた。
　各々好きなものを注文し、受け取るとテーブルを一つ占有。全員席につき、さあ食べようとしたとき。
「……ん? おまえら、もしや!!」
　突如投げかけられた声に、一同は振り返る。
　そこにいたのは、焦げ茶色の癖が強い髪で、体格がいい少年。先日ブラックスワンと対決したゲーマー集団イーグルスのリーダー、キリトだ。
「あっ、あの時の!」
「天妖ノ舞、お前、この高校だったのか! あれ!? 駅弁2000に百花繚乱にRed Rose Evangelも!?」
「え、何? キリト、皆のこと知ってるの?」
　不意に反応したのは麻音だった。彼とキリトは部活が同じで仲がいいのだ。
「いやぁ、この間ゲームでコテンパンに負かされてさ。あ、そうそうそういえば、最近メンバーちょっと減ったんだよな。レイはどっか行っちまうし、その後から何人か抜けてるし」
「それって、もしかして」
　愛那は不意に口を開き、数名の名前を挙げた。キリトは頷き、全員抜けたメンバーだという。
　キリトは、愛那が――ブラックスワン全員が暗殺者だと、知らない。
　愛那の瞳に静かな炎がよぎった。しかしキリトは気付かず、スマホを掲げる。
「でさー、そのせいで今度出ようと思ってたゲーム大会、人数不足で出れなくなってさ。必要なのはあと6人。今んとこ、オレとマサト、ヒロキ、アキラは出る。で、本番は来週の日曜。U-18なら誰でも出てオッケーみたいな」
「……すみません、その日は部活の大会で。私と愛那さんは出られないです」
　桜花は小さく謝る。自然科学部に所属する二人が出場する大会とゲーム大会は、丁度日付が被っていた。
　対し、キリトはひらひらと手を振る。
「あー、大丈夫大丈夫」
「僕、出たい! ね、皆で出ようよ!」
「いいね、やろうやろう」
「マジで!? サンキュー!! 一応、出場チーム一覧な、これ」
　そういって掲げられたスマホに一同は顔を寄せる。
　――朱凛と弁籟の表情が変わった。
「この人……!」
「コイツラ……!」

　チーム「エンジェルフルート」メンバー、西ノ瀬瑠華。
　朱凛の元友人、彼女の家族を殺した者。

　チーム「斗六」。
　弁籟の元同級生、彼の学校を潰した者たち。