赤鬼を酢に指して食う ページ13
「四木さん、知ってますかぃ」
とある部屋に、一つの声が響いた。
「……何でしょう」
続いて、愛想の無い声が返ってくる。
赤林海月と四木春也。粟楠会のトップに近い2人が世間話を始めているところだ。
「いやね、池袋であの平和島静雄の兄ちゃんを越える女の子がいたって話だ」
それを聞き、四木は心臓を掴まれた気分になった。
それでも一切表情を崩さず、淡々と嘘を吐く。
「知りませんね。……にわかには信じがたいのですが」
それを聞き、赤林はクックッ、と笑う。
「いやあ四木の旦那がんな堂々と嘘を吐くたぁねぇ。その女の子が誰かってことすら、もう解ってんでしょう?」
四木は露骨に舌打ちをした。
すると赤林は、怖いねぇ〜、とケラケラ笑う。
──この男は苦手だ。
四木は何時だって警戒を怠っていなかった筈だ。
にも関わらず、こうしてここまで情報を掴んでいる赤林に対し、どうしても苦手意識を持っていた。
ブー、ブー。
不意に、四木の腰ポケットに入っているスマホが震えた。
一体誰からの電話かと思い、液晶に現れた名前を見た四木は──
一瞬、思考が停止した。
ほんの1秒にも満たない時間だったが、赤林は目敏くそれに気づく。
席を立とうとした四木に、「ここでどうぞ?」と赤林がすかさず声をかける。
それを見て四木は小さく溜息をつき、電話に出た。
「──もしもし」
「……えぇ、そうですね。お久しぶりです」
──さーて。誰からの電話かねぇ
先程の四木の様子から、何かあったのかと赤林は考え、四木の声に耳を傾ける。
「──えぇ。存じております」
「……あなた、仮にも情報屋でしょう? ご自分で調べになさったらどうです」
それを聞いて赤林は眉を顰める。
──情報屋の兄ちゃんかぃ?
──にしても四木の旦那が、あの兄ちゃんにこんなに楽しそうに皮肉を言うかねぇ。
「わかりましたよ、聞くだけ聞いておきます」
「…………」
「……知らない方が、良いと思いますよ」
その言葉で赤林は、通話相手が折原臨也では無い事を確信する。
四木は、あの胡散臭さの塊である折原臨也を相手に何かを気に掛けるという事はしないからだ。
それから四木は通話相手と二言ほど交わして電話を切った。
そして赤林の方を睨む様に見て、言う。
「────宮園A」
その固有名詞に、赤林は聞き覚えがあった。
──ハハッ、成程。
面白くなりそうだ、と粟楠会の赤鬼はクスリと笑った。
42人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Sora@白楽(プロフ) - せかすとさん» ありがとう!(嬉泣)頑張るよ……頑張るね……! (2017年7月23日 19時) (レス) id: 3aa4930c25 (このIDを非表示/違反報告)
せかすと(プロフ) - いつまでも待ってますぜ! (2017年7月18日 23時) (レス) id: 10c3da28dd (このIDを非表示/違反報告)
Sora@白楽(プロフ) - Ruri ∞ 瑠偉。さん» え!? ありがとうございます! そんな事言われたの初めてです( *´艸`) 頑張りますね! (2017年5月31日 20時) (レス) id: 3aa4930c25 (このIDを非表示/違反報告)
Ruri ∞ 瑠偉。(プロフ) - お気に入り失礼します´`* (2017年5月31日 19時) (レス) id: 4bea85aa40 (このIDを非表示/違反報告)
Ruri ∞ 瑠偉。(プロフ) - 改行の仕方がお上手で、キャラの個性がはっきりしてます´`* 尊敬します!更新頑張ってください! (2017年5月31日 19時) (レス) id: 4bea85aa40 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:sora@白楽 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/soranana/
作成日時:2017年4月24日 17時