参 ページ5
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「あ、こっちにいっぱいさいてるよ。」
『わァ、きれいだねェ〜!』
ふと、其方をチラリと盗み見ると結局兄様も楽しげに御花を摘んでいた。
そんな兄様を見て私も思わず微笑む。
ふと、目に留まった御花。
思わず見詰めて仕舞う程華やかな其れは、1輪だけしか無かったのにも関わらず、何とも云え無い存在感を放って居た。
此方に駆け寄って来た兄様も足を止め、其方を喰い入る様に見詰めて居た。
「すごく、きれいだねェ」
兄様が小さな声でポツリと呟く。
『このおはな、かなしそうだよ?』
「え…?」
私は兄様に同調しなかった。
何故、そうしなかったのかは今の私には到底理解出来ない。
然し、確かに其の時そう思ったのだ。
否、綺麗だと思った。勿論美しいとも。
只何故か、私の目に映り煌きを放つ其れは如何しようも無く寂しそうだった。
私は半ば其れに吸い寄せられる様に手を伸ばした。
__否、其れは惜しくも叶わなかった。
耳を
「あぁー!おまえら、なにしてるんだ〜?」
所謂近所の悪餓鬼共。
彼等は私達兄弟が仲が良い事に屹度嫉妬して居たのだろう。
私達に突っかかてくる事が多々有った。
只、此の時ばかりは少し違っていた。
「…ッ、きみたちそれ…」
兄様の声は、躰は、震えて居た。
私も例外では無かったけども。
「あァ、これか?」
「あたらしくかってもらってせっかくだからさァ?」
「きれあじ、ためそうとおもったンだよ」
ケラケラと笑う眼前の子供達。
手に握り締めて居るのは“鋏”。
本来ならば其れは
然し、この場に紙など無い。
其れが向けられて居るのは兄様、だ。
今思えば格好良い其れを自慢したい只の子供の一寸した悪戯何て事は直ぐに分かる。
然し私は鋭く尖った刃先が、純粋で真っ直ぐな其の瞳が、如何仕様も無い程怖かった。
其れでも。
其れでも私は兄様を守りたかった。
助けなきゃ、そう感じたから。
だから私は兄様を庇う為に其方に走った。
__兄様の前に出た瞬間、私の意識が途絶え始める。
薄れゆく意識の中、兄様が私の呼ぶ声が聞こえた。
寸前、彼の御花と兄様が視界の端に映った。
(やっぱり、どっちもかなしそうだなァ。)
そう思ったのも束の間。私の意識はプツリと其処で途切れた。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時