丗参 ページ35
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其れは此処に来て初めて読んだ本である。
彼の時から言葉には出さなくても何となく家に居づらくて街を当てもなく彷徨う事が増えた。
公園に行っても瞳の所為で友達が出来る訳も無く、何処に行っても好奇の目に晒されるばかりだった。
其の探る様に細められた目が、何を話しているのかが容易に判る其の口元が厭で、厭で仕様が無かった。
そんな時に出会ったのが彼の司書さんだった。
一人で散歩をする虚しさに幼い私が慣れる訳も無く、建物の塀の縁に腰掛け、足を揺らし乍ら只時間が過ぎるのを待っていた時。
彼の人は優しげな笑顔で私の手を引いて呉れた。
顔を上げてごらん、と云われ見た景色は私の退屈で無機質な世界を色鮮やかに染め上げた。
カラフルで大小様々な大きさの本が自分の背丈の何倍も有る本棚に並べられている其の様子は圧巻だった。
其の中に有ったたった一つの本。
引き寄せられる様に手に取った其の本を読んで初めて本を読むのが苦手だと気付いたけれど、不思議と苦痛にはならなかった。
「本当に其の本好きだったよねェ。どんな噺だったっけ?」
『えッと、慥か、三人兄妹の噺だったような…?』
「嗚呼!其れだ。喧嘩するンだったよね?慥か」
三人兄妹に喧嘩。
其の言葉に少しだけ心臓が早くなった気がする。
三人兄妹何て只の偶然で、あれは喧嘩なんて可愛らしいものではないのに、妙に騒がしく鳴り響く心臓に嫌気が差した。
「最後はどうなるンだッけ?」
『え?最後は、えッと、何だっけ?』
どれだけ考えても最後がどうなるのかが思い出せない。
ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかすらも判らなかった。
これじゃあ好きな本だと堂々と豪語する事は出来ないかもしれない。
「まァ、兎に角貰って良いよ。じっくり家で読んで後で俺に教えてよ」
『判り、ました』
「楽しみにしてるよ。嗚呼、もう夕餉時だ。ほら、子供は早く家に帰らないとね」
帰り際に私の頭を一撫でして彼は司書室に悠然とした足取りで去っていった。
何故だか判らないけれど、私は其の後ろ姿をずっと眺めていた。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時