廿壱 ページ23
*
「如何思う、ですか?」
兄様の優しくて大好きで、大嫌いな声が私の耳に届く。
「嗚呼、矢っ張りAと兄弟になるなら訊いておいた方が善いと思ってねぇ」
其の噺は未だ続いていたのか、と少しだけ驚く。
と云うか兄弟になる前提なのか、と云う事にも。
「あら、ナオミには訊いて呉れませんの?」
「まぁ、大方答えは予想出来るからね」
私の大切なAは渡さない、とか其の辺りだろう?と云って薄く笑う。
其れに負けじと姉様もにこりと笑う。
何時もだったら嬉しい姉様の言葉も今は嬉しく無かった。
多分、余裕が無い所為だ。
「流石ですわね。其の通りですわ」
「だろう?其れで」
と太宰さんが言葉を切って顔の向きを変える。
勿論、其の先は兄様で私は耳と、目と、それと心迄もを塞ぎたくなる様な衝動に駆られた。
太宰さんが兄様の返答を待っている事なんて私でなくたって想像するのは容易だろう。
「え、と良いンじゃないですか?」
____当たり障りの無い答え。
否、普通の兄弟はこんな事は云わない。
仲が良くても、例え仲が悪くても、だ。
嗚呼、仕様が無いか。
私達は本当の兄弟では無いのだから。
其れ依りも疾く其の話題は終わらせて欲しい。
然し、私の淡い期待は直ぐに崩れ去って仕舞う。
「えぇー。何だか軽くないかい?」
「私としては、勝った方が本当の兄だ、とか云う熱い戦いをしてみたかったのだけれど」
残念だなぁ、と呟く太宰さんに心の中で何処の少女漫画だ、と突っ込みを入れる。
と云うか、私相手でそんな事は起きる筈が無い。
屹度兄様は困った様に眉をひそめて私なんか簡単に譲って仕舞うだろう。
姉様の場合は別だろうけど。
何て、考えている間にも太宰さんはしつこく兄様に声を掛けている。
「もしAが妹になって呉れたら毎朝起こしに来て貰って、いやぁ、遣りたい事が沢山有って困るねぇ」
「別にどれも良いと、思いますよ。ボクには関係ありませんけど」
───────…関係、ない。
何故か、其の言葉が私の胸に非道く引っかかって、まるで鉛の様に重くのしかかった。
判っていた、筈だった。
兄様が私の事を嫌いで私に興味が無い事も。
だから太宰さんの質問を答えるのが鬱陶しかったのも。
「─────…ッ、A!」
後ろで姉様が私の名前を呼んでいる。
でも、其の声も扉を閉めたら聞こえなくなった。
昇降機を待っている時間が勿体無くて、階段を一段飛ばしで駆け下りていった。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時