廿弍 ページ24
*
判っていた。
だけど若しかしたらって。
幾ら血が繋がって無くたって偽物だったとしても私達は兄弟だと。
そう思っていた。
私が直ぐに
そう思ったら我慢していた涙が絶え間無く流れてきて視界が滲む。
『う、い、たァ』
何も無い処で
勿論悪い意味での事だけれど。
再び走り出そうと思って立ち上がろうとしたら鈍い痛みが膝に走り、顔を歪める。
恐る恐る視線を下に下げると思った通りだ。
私が履いていた黒タイツが処々破けて膝からは血が流れている。
『もう、之、履けないなァ』
何て、大分ズレた事を溜息混じりに呟く。
弱気になりそうな自分に喝を入れ、痛みを我慢して立ち上がった。
少しでも遠くへ。
そう思って又、私は走り始めた。
*
静まり返った其の部屋はまるで氷点下にいる様で其の場にいる誰かが思わず身震いした。
先刻、彼女___谷崎Aが出ていった部屋は時計が無情にも時を刻む音だけが響いた。
何時もは気にしない其の音も静寂が支配している此の部屋では大きく訊こえる様な錯覚に陥った。
「兄様。ナオミが云いたい事、判りますわよね?」
其の沈黙を破ったのは彼女の姉で有るナオミだった。
其の瞳は冷酷で、軽蔑さえも感じさせる姿は何時もの彼女からは全く想像の出来ない事だった。
兄様と呼ばれた青年、
「何で、何でッ。兄様は───…」
兄の其の表情を見た所為か、彼女も瞳を大きく見開き言葉を詰まらせた。
「彼の子、何時も悲しそうでしたの」
「兄様を見る度に、勿論私を見上げていた時でさえ、泣きそうな顔で笑っていましたわ」
ポツリ、ポツリと今迄の事を呟く。
若しかしたら其の言葉は誰に向けたものでは無いのかもしれない。
何故なら其の声は余りにも小さくて耳をすませなければ訊こえてこなかったのだから。
「彼の子は優しい子ですわ。其の分自分の云いたい事が云えていなくて」
「だから彼の子にもっと寄り添えば善いのだと思っていました」
尤も其れは随分と浅はかだった様ですけれど、と付け足す様に云い、自嘲的に彼女が笑った。
「之じゃあお姉ちゃん失格、ですわね」
姉様がそう云って涙を流していた事なんて、私は勿論、知る訳が無かった。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時