第９話 ページ10
その後、運転の交代や休憩をはさんで頭上の標識にも京都までの距離が現れる頃。
「ヒントがある、って言ってたけど。向こうで何をするつもりなんだ？」
「人と会うんだよ。俺が知る限り、こっちでは界の狭間、結界の中で過ごしてる」
後部座席、玄樹を気遣いながら勇太は言う。
「京都は神社仏閣が多いとか、歴史があるとか言われてるけどその分、謎も多いんだよ。どの時代、誰がとか分からないけどいろんな工夫で守られてきたものがあるんだろうね。で、これから行く場所も、その一つなわけ」
市内の中心とされているのは、京都御所から玄関口の京都駅辺り【洛中】。大阪や奈良へと繋がる地域を【洛南】、その対極で学生の街と言われる【洛北】、小野小町や酒処伏見で知られる【洛東】、かぐや姫の生家があったという【洛西】。その中で興味深い地名を残すのが、洛南……厳密には京都駅の南西に【朱雀】が散見される。朱雀は、南方を守護する神と伝わる。
「そこだけ見ると、方角からついた地名なんだと思うでしょ。でも、それならあと三つも同じような場所があっていいんじゃない？」
「そうだよな」
アジア圏で四神とされるのは朱雀の他、東の青龍、西の白虎、北の玄武を併せて揃う。もしかつての都人がその守護にあやかって名付けたなら。南だけ、では片手落ちにも思える。
「でも、ないんだ。西に【龍】のついた地名はいくつかあるけど方角では逆になるし。東には西を表す【白秋】すら見当たらない。北には、かろうじて玄琢という地名があるけど」
市内は、南だけが山のない地形。守りの薄い地域だからこそ、朱雀の言霊を置いたのか。
「でも、ホント言うとね……あのシェアハウスもそうなんだ。こっちの世界で転化した力を元に部屋の位置を考えた。紫耀は火。俺は水。対極だから対角線にしてバランスが保てるように。ただ、この先では別の意味になるけどね」
「別？どういうことだよ？」
「火は、南。水は、東。四神になぞらえると、そうなる。でも、条件は三つ。その土地の力を合わせても足りない。だから、足りない一つの為にも玄樹が必要だった」
白々と明るくなりつつある、空の下。
「異界を渡り歩くあの人は、俺達が訪ねることも、その理由をも見通してるんだろうけどね」
車は、人知れず緑に包まれた場所へと進んでゆく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒那智(プロフ) - ななみさん» こんばんは、ななみさん♪いつもコメントありがとうございます★完全新作ではなく、いずれ書くつもりだった番外的な続編になります。話数にもよりますが、以前のれんいわカテゴリーに載せる予定なので今少し(いつだよ)お待ちくださいませ。 (2020年10月4日 19時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - 新作楽しみです！楽しみがある幸せ^_^黒那智さん、待っております。 (2020年10月4日 16時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - けいこさん» はじめまして、コメントありがとうございます(^_^)まだ書ききれてない部分もあって、ちょっと説明くさいパートが続いてますが、気長にお付き合いいただければ嬉しいです★また遊びに来てくださいね。 (2019年12月8日 3時) (レス) id: bd09ac7e96 (このIDを非表示/違反報告)
けいこ(プロフ) - この不思議なお話好きです。凄く作り込まれていて色々納得！ (2019年12月8日 1時) (レス) id: 5ebf2863bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒那智 | 作成日時：2019年9月22日 16時
