第5話 ページ6
レンの異母弟に当たる第三皇子は、高位魔族を母親に持つ。その為、成人前にもかかわらず魔力のスキルは兄弟で最も高く後ろ楯も多い。
現に、今も。城の結界を易々と破ってくる。
「お前、ちょっとは遠慮せぇや」
「なんで?玉座の間には出入りしてないでしょ」
金の双眼が、無邪気に笑った。
「なーんか、この城に動きアリって聞いたから来てみたんだけど?その子、かな」
「そうなんちゃうの」
素っ気なく答える。恐らくは斥候が放たれているのだろう。考えられない話ではなかった。
「綺麗な子だね。どこから拐って来たの?」
「人聞きの悪いこと言うな。召喚したんや」
「同じようなもんでしょ。ある意味、召喚のがヤバくない?召喚主の命令には絶対服従だしさ。羽根がないけど、切り落としたの?」
「ええ加減にせぇよ、カイト」
一歩、前に出る。その背で庇うように。
「ふうん、気に入ってるんだ?名前教えてよ」
「断る。どうせ呪で縛るつもりやろ」
「レンが気に入ってるなら、持ってかないよ。でも、飽きて要らなくなったら貸して」
悪意はない。召喚者に人格を感じる習慣が、浸透していないだけのことだ。けれど、背後には怯える気配がある。
「でも、なんかその子にレンの気配がしない。変なの、味見くらいしたんでしょ?」
「客人をどう扱おうと、俺の勝手や」
「……え、嘘。レンって本気で馬鹿なの?」
「勝手に言うとけ。だいたい、お前とこ一族は俺と関わるの、ええ顔せぇへんやろ」
カイトの母親は、魔族の中で名門の部類だ。
当然、選民意識もプライドも無駄に高い。
「あー、良いのアイツらは。レンと話すだけで無能が感染るとか思ってる相当な馬鹿だもん」
「まぁ、ええけど。そろそろ帰れや」
「そうだね、偵察も済んだし」
手の内を隠そうともせず、カイトは言った。
「いや、偵察いうのはバレんようにするやろ」
「そうだけど、レン魔力にハンデあるんだし。そのくらいでちょうど良くない?」
小馬鹿にしているように、聞こえるけれど。
育ちからすれば奇跡的なほど友好的な異母弟がレンは嫌いではなかった。少なくとも、結界をくぐり抜けてこれる程度には警戒していない。
「じゃあね。今度は、名前聞かせてね」
そして、カイトも。魔界全域で囁かれているほど、異母兄を過小評価してはいなかった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時