第４話 ページ5
夜が明けた。魔界に太陽はないが、人界では死に絶えたと称される月に地上を照らされて。
「……おはよう」
中庭の中央。草花に包まれて、それは眠る。
「昨日、お客さんが来たんやで」
瑞々しい花々の死骸を集めての、朝の挨拶。人界では花束と呼ばれるらしいが、摘んだ瞬間に命を失うのだから死骸、と呼ぶのが適当な気がしてならない。
ここで眠るのは母親である。若くして生涯を終えたが、数年は共に過ごすことができ記憶もそれなりにある。瞳の色も、母親から受け継いだものだ。
「なんや、早いな。ちゃんと休めたか？」
遠慮がちな足音に、レンは言った。一方、朝になると玄樹も少し落ち着いたようで。
「昨日の人が言ってた。レン、魔王なんだね」
「親父がそうやったからね」
「でも……ここって僕が聞いてた魔界と違ってる気がして。花が咲いてるとか、思わなかった」
うーん、とレンは考える。
「どんなイメージか、想像つくけど。ある程度力があったら環境は変えられるんやで？俺は、この人が好きやったように庭も作ったし」
「これ……お墓？」
「この城で一番大事な場所。こんなん言うたら玉座以上にですか、とか説教されるんやけど。不肖の息子とか言われとるんが、あいつらには我慢ならんみたいでな」
巷の意見は、ほぼ共通している。既に魔王となっていた第一皇子は魔力はともかく、才覚があるとされていて。成人前の第三皇子は、生粋だけあって魔力も後ろ楯も申し分ないと聞こえてくる。けれど、第二皇子はやはり人の子だけに見るべき点はない、と揶揄されて久しい。
「まぁ、見た目も魔族らしいことないし。言動ズレてるみたいやし。兄弟と比べて魔力も弱いし。結局、半人前なんかなあ」
「そんなこと、ないと思う……けど」
玄樹は言った。
「昨日の人だって、強いとか弱いとかじゃなくレンのこと自分が仕えるに値するって感じてるから、評価されないのが悔しくて……怒るんじゃないかな」
「お前も、変わってるなあ」
自分も、魔王としては規格外だけれど。
「一応、魔族やろ？他人のこと思いやるとか、だいぶおかしいからな」
「そう、なの？」
「ああ。どうやら、その生粋が来たみたいや」
花々の向こう。空間に、歪みがある。
「悪う思わんとってな。アイツが普通やねん」
ここは、略奪も殺伐も当たり前の魔界なのだから。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
