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第6話 ページ7

異母兄、という点ではレンと同じでも。第一皇子であるショウの城は勝手が違う。カイトの魔力を持ってしても、結界のレベルが高過ぎて実体ごとの転移は無理だった。
【もう、なんでこんなにガチガチなのさ】
「結界ってのは普通、そうだろ」
 傍らでは、カイトの実像が揺れている。声はそこから響いていた。実体が無理なら思念で、と切り替えたのだろう。
【まーた、結界に強い魔族強化したんでしょ】
「だったら何だよ」
 不機嫌に睨み付けても、カイトは怯まない。
血溜まりの双眼に対して耐性を持つ者は決して多くないが、魔王の血筋ならば道理ではある。
「で、何か用あったんだろ?」
【そ。レンがね、面白いの召喚してたの】
「お前、あっちも掻き回してんのか」
【なんか、ひどくない?綺麗な子だったんだよ。両方とも薄い赤い目で……って、あれ?】
 ふと、気付いたように。悪い笑い方をする。
【もしかして、ショウなんじゃないの】
「何がだよ」
【いい?両目が同じ色なんてないでしょ、普通。しかも……色薄くて力は弱くても赤、なんてさ】
 空気が張り詰める。否、そうさせたのだ。
「帰れ」
【そうだね、言うこと言ったし】
 カイトが魔族らしい魔族、と言われる理由はここにある。要は、面白いか面白くないか。
【あ、レンまだ何もしてないみたいだったよ?】
 特にどちらかが嫌いだとか、破滅を望んでいるわけではない。ただ、ショウの動揺を見て。満足そうに姿を消した。
「……生きて、たのか」
 思い出すのは幼い日の記憶。差し伸べられた手と、柔らかな白い翼。気遣ってくれたのは、自分と同じくらいの天界人で。
「生きてて、くれたんだ……」
 ずっと、気がかりで。そうであって欲しいと願っていたけれど。あの日、無意識に。生きていたくて、犠牲にした。そう思っていた命が。予想だにしなかった形で、すぐそばに在る。
「………っ」
 幼いレンを抱いていた、人間。そんな二人をただ静かに見守っていたのは、見たこともない顔をした魔界の王だった。そんな光景が自分の時にも、あったのだろうか。既に天界へ戻っていた母親は、どうしているのだろうと。
 子供、だった。天界の空気が、魔族には毒にしかならないと、知っていたのに犯した過ち。突き立てた牙から広がる、血の味が蘇って。
 心の奥底が、例えようもなくさざめいた。
 
 




 
 

 

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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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