第22話 ページ23
魔族の契約は、大きく分けて2つある。主に呪で縛る主従関係が一般的で、通常はどちらかが天寿を全うすることで終わる。無論、例外的にその過程なく主従に至るケースも稀にある。
ショウと玄樹は、結果からすればそれに近い。けれど。
「主従目的以外での契約が、あとひとつある」
髪に、額に、瞳に。キスが降るたび、伝わる指へ宿る熱。レンの気が、そこから揺らめく。
「親父殿は、3人と交わした」
今となっては、有効な契約は一つだけれど。
「俺は、どうせやったら……1人だけがええな」
「それって」
ふわり、風になびき花弁が散るように。肌が近くなる。闇の気が、指から心臓へ流れ込む。
「たとえサキュバスでも、相手がお前やったら惑わされてもええ、て言うてるんやけどな?」
「……は、恥ずかしいから言わないで」
外は暗くなっていたが、光源は月しかない。それでも、浮かび上がるほど白い肌。目を引く首筋の傷。それがなければ、自分達の出会いもなかったのだけれど。
「えっと……無理、だから……そういうの」
腕を上げて、囁きを伝える耳元で。
「でも、帰るとこは……ここしか思わなかった」
ただ、そう言って微笑んだ唇は。しばらくの間、言葉を成さなかった。繰り返されるキスと肌を辿る手指に、やがてそれを追っていく舌に内側から揺さぶられて。
「……あ、ついっ……」
伝わってくる。指に宿る気が、そのまま鼓動に。激しく脈打ち全身へ広がって、止まない。
熱くて、優しく切ない、闇の気質に覆われる。肌への刺激のみならず、身体の内面までもが。
「……ま、待って……」
変わってゆく。まるで、運命を変えたあの日のように。違うのは、芯から疼く衝動だけだ。
「…は、あぁっ……!」
窓から差し込む光が、壁に作る二人分の影。
受け入れ、反らされる背中を支える腕の中で。
変わりつつあるものが、魔界の夜空に現れる。
その日、幾人かの魔族は常ならぬ月を見た。昨今、赤く染まっていたそれが外輪だけを残し闇に溶け込む黒へ変わっていく、その変貌を。
「ほほう、これは」
かつての赤と、今宵の黒を瞳に称える老臣は全てを悟った様子でただ、頷いた。
「三界に動きが生まれる兆し、ですかな」
それこそが、先代が望んだ未来のひとつで。
新たに訪れる未知への予感に他ならなかった。
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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時