闇の腕(かいな)

エピローグ〜水晶〜 ページ24

おや、お戻りになられたか。魔界への旅路は如何でありましたかな。魔族もまた、人の世界と大差はありますまい？否、あるいは人よりも人らしくあるやもしれませぬな。
　うん？何か、気掛かりなことでもおありか？
ふむ……月の色が？ほほ、力の均衡というものでございましょう。常は秘めたる力が、ふと表にといったことは人の世界でも見受けられます。それが一時的なものであるかどうかは、この先にかかって参りましょうが。黒、とすれば第二皇子の力が第一皇子のそれを凌駕したのでは？
　ならば今少し、魔界に留まりたいと？いや、それは如何なものでしょうな。良いか、お客人は肉体をこちらに置いて旅をなさるのですぞ。天界や魔界と、人界は時の流れが違いまする。お戻りが長くなるほど、残酷にして顕著なものと感じられることでございましょう。
　なに、婆はまだ健在にございまする。それがいつ何処になるかは知れませぬが、お会いすることもございましょうぞ。年寄りは気まぐれにございますれば。人の世界にも、興味深きもの多々見受けられますゆえ。
　お客人が目の当たりにされた、かの出来事がこちらの世界にいかなる変化をもたらすのか……或いは何も変わらぬままなのか。ほほ、全ては彼ら次第にございまするよ。

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