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第13話 ページ14

老臣の背中を見送り、仮面の男は言う。
「良い臣下をお持ちのようだが。呪を施された様子もないのが、いささか腑に落ちませんね」
「必要と思わんからや」
「ほう?では、こちらで囲い込んでも?」
「聞くだけ無駄や」
 本来、主従の契約はどちらかが世を去るまで続く。だが、レンの臣下はそのほとんどが先代と契約していた。それを知る魔族は、人間の血を引く愚息への憐れみと解釈したのだけれど。
「自分の意志でここにおるからな」
「……意志、ですって?」
 信じがたい、と男は首を振る。無理もない。彼らは皆、先代へ契約の解除を申し出てレンの元へ来た。守護が失われることを恐れず、自らが信じる道を選んだ。だからレンは一人の例外もなく、彼らを呪で縛ろうとはしなかった。
「別に、分からんでええよ」
「それでは、いつ裏切りで足元が崩れるやも」
「相手を信用してへん輩の思考やな」
 男は、言葉を失った。闇、とはそうなのか。
その特性がそうさせるのか、と。
「……来たみたいやな」
 躊躇なく、玉座を降りて。召喚した存在に、笑顔を見せて。
「良かったな。お前が探してた相手な、お迎えまで寄越してくれたんやで」
「……え、っ……」
 突然のことに戸惑う肩から、マントを外す。
「全部準備できてから言うつもりやったけど。玄樹が探してるんは、俺の兄貴で間違いない。アイツは……ショウは強い。せやからこれはもう返してもらうな」
 玄樹はレンの向こうにいる仮面の男を見る。
「なるほど、確かに血溜まりらしき片鱗です。ショウ様の命により、ご案内致します。さあ」
 手が伸びる。目的は、そこにある。なのに。
「……レン」
 見上げた相手は、表情を消していて。なまじ整っている顔立ちが、恐ろしく冷たく見える。
所詮、召喚した側とされた側に過ぎないのに。
「あの子に会ったら、また」
 戻ってきて、良いのだと言って欲しかった。けれど、レンはそのまま通り過ぎて行く。
「待って……」
「早よ行けや!」
 途端、身体の自由が効かなくなった。それどころか、足が勝手に動き始める。仮面の男に向けて。カイトが言っていた、召喚主から受ける服従。けれど、レンはその圧倒的な力を一度も振りかざそうとはしなかった……なのに、今は。
「レン……」
 微かな声を背中で聞きながら、目を閉じる。その胸の奥で、魂のひび割れる音が聞こえた。


 
 

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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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