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第14話 ページ15

踏み入ったゲートの中は、まるで生物のように蠢き、背後を遮断する。そして腕を掴む仮面の男の指先はそう……死人の、それだ。
「どうして、そんなに冷たいの」
 振り払うこともできず、問いかけた玄樹に男は笑った。熱のない、口元だけの変化である。
「我が血潮はショウ様にお預けしております」
「あ、預けるって……」
 猫が言う【魂を抜かれる】とはこのことなのだろうか。それとも、別の意味なのだろうか。
無論、ショウの多くを知っている訳ではない。幼い頃、一度会ったきりの……あれを会った、と言えるなら……だが。玄樹の目には、ただ生きることにひたむきな少年にしか思えなくて。
「貴方は?ホントに、それで何ともないの?」
「おかしなことを言いますね」
 男は、訝しげに玄樹を見た。
「主に命を捧げるが本望というものでしょう。もちろん、ショウ様に正式に契約して頂いたら同じようになさるのでしょうね?」
「契約、って」
 文字通り、意味が分からなかった。ショウに会いたかったのは事実で。けれど、それは目的あっての話でしかない。それとも、魔界は契約すなわち呪で縛らなければ叶えられないのか。
「その瞳からは、血溜まりの気配が致します。ショウ様と関わりがなくてはあり得ない。で、あれば正式に契約なさるのが筋でしょう」
 男は、その流れを疑っていない様子だった。それが信じる世界の全てなのだろう。恐らく、その他の選択肢を可能性を考えたこともなく。
「ショウの為に、生きてるんだね」
「当然です。あの方の臣下なのですから」
 ある意味、盲信に近い忠誠。けれどショウが本当に望んだのはその形、だったのだろうか。
「開きますよ」
 前方で、ゲートが蠢く。視界に広がるのは、どうやら広間のようだ。レンの城、玉座の間に近いが何かが違う。左右に並んだ彫像のせいかと仰ぎ見た、その時。
「………っ!」
 思わず息を飲んだのは、それらの無機質な目の数々が生身のそれだと気付いたからだった。
「どうです、素晴らしいでしょう」
 仮面の男が、誇らしげに言う。
「これだけの魔族が自我を捨てるほど価値ある御方こそ、そちらにおられる柘榴の城主です」
 その、彫像の羅列と見紛う生きた骸の先には記憶の中より、いっそう深い赤の双眼がいて。
「久しぶり、だな」
 掠れた声で、ただ、それだけを言った。
 

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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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