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第12話 ページ13

【ミツケタ!レン様ノ、マント!】
【お前、取り敢えずそれ羽織ってろよ?】
 張りつめた城内の空気を感じ取った、一羽と一匹が玄樹に言った。
【自慢じゃねえけど、俺ら何もできねえから】
「え、なに?何が起きてるの?」
【柘榴、キタ。レン様ノ兄者。ツヨイ】
【本人じゃねえだろうけど。ヤバいんだよ】
 猫は、ペシペシと尻尾で床を叩く。
【噂じゃ、柘榴に関わると魂抜かれるって】
【屍イッパイ、城ノナカ。生キテル屍ダラケ】
「え、でも……さっき会った子だってそんなに」
 知らないだけ、なのだろうか。
【あれは成人前、まだ魔王じゃないからさ】
【今ハ、酷イコトシナイ】
「先のことは分からない、ってこと?」
 魔王、とは本来そういうものなのだろうか。
【チガウ。ミンナ、チガウ】
【三人とも、抱えてるもんが違うんだよ】
 猫は言った。
【力の現れ方も、魔界で必要なものも違う】
「どういう、こと?」
【今、昼の月は人界と同じ色だけど。もう少ししたら金になる。夜の月は、赤。柘榴の色だ】
【レン様、カクレンボ。誰モ、ミテナイ】
 そこにいながらにして、存在を隠す。それが意図的なものだとしたら……理由は、果たして。
【月を見れば、魔界の力関係が分かるんだと】
【チガウ、答ハ空】
【空飛ぶと、分かるらしいぜ?……けど、今は】
 猫の耳が動いた。足音を聞いたのである。
「失礼致します、お客人」
 部屋を訪ねて来たのは、血溜まりと漆黒の瞳の老臣だった。そして、表情なく告げる。
「城内には立ち入らぬよう伝えておいたはず」
【【ヒィ!】】
「あ、あの。僕が退屈してるから来てくれたんです。叱らないであげてください」
 玄樹が言うと、無言で見返してくる。
「お庭に戻ったら、大丈夫……ですよね?」
「彼ら本来の居場所です」
 途端、弾かれたように窓から出て行く二つの影を見送って。老臣は言った。
「身を隠す場所も多い。そのようにお作りなのです。万一の事があっても生きられるように」
「……自然の中の、結界を?」
 誰が、とは確認するまでもなかった。そして城内への立ち入りを由としない事情も。
「参りましょうか。レン様がお呼びです」
「……はい」
 どんな理由で。何の目的があって、なのか。説明はまるでない。なのに恐れや疑う気持ちが湧いてこないその答えは。とても深い場所に、今は眠っているような気がした。

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黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話+後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます!次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます! (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問&コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒那智 | 作成日時:2019年5月1日 12時

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