第１１話 ページ12
屍の城と噂されることもあるショウの居城は別名、血溜まりから柘榴とも呼ばれている。
「お初にお目にかかります、レン様」
ゲートから現れたのは、一方の瞳を仮面で封じた血溜まりの男だった。その赤は、ショウと遜色ないほど濃く、側近中の側近と伺わせる。
「身に余る光栄ではございますが、」
「御託はええよ。人の城にいきなり乗り込んできたからには理由があるんやろ？」
「ご明察、痛み入ります。本日はお預かり頂いているものを持ち帰るように、とショウ様より申し使っておりまして」
言葉は丁重だが、城の中枢にゲートを力ずくで開くことからして意図は明白だった。例えば他の手勢を集めても、血溜まりの強さに耐性はない。レンの臣下で血溜まりを持つのは、傍に控える老臣のみだからだ。だが、それよりも。
「その、仮面。城での流行りか」
「左様にございます」
流行り、とは皆が必要とするという意味だ。碧眼とはいえ、同じ濃さを持つ臣下でさえ保たないかもしれないほどに。
「預かり物、とか言うたな」
「これ以上、我が主の所有物にお手を煩わせるも心苦しく。どうぞ、お引き渡し下さいませ」
「所有物？」
レンの顔つきが変わった。めったに見せない統治者としての顔だ、と老臣は感じる。怒りを抑え込む時、レンは先代の気配に最も近付く。
「お前、ショウの側近やろ。そういう言い方、アイツは許しとるんか？魔界に聞こえる柘榴も臣下には恵まれへんとか、大したことないな」
「……如何に弟君とはいえ、無礼でございます」
どうやら、忠誠心は健在のようだ。けれど。
「お前の言動がショウの評価に繋がる、て言うただけやで？ホンマに臣下でおるつもりなら」
状況を、本当に分かっているのなら。
「ショウがどんな気持ちで命じたか考えろや。そこが分かってたら、物やなんて言われへん。どんだけ、大事な……意味が、あるか」
思い出す。昔、一度だけ見た光景を。魔族の心臓に指を突き立て、滴る滴を苦しげに舐めていた横顔を。生きる為、罪を背負っていく為に殺める命の重み。それは世界の均衡を保つ為。それに今、耐えられなくなりつつあるのなら。
「……呼んで来い」
「承知、致しました」
全てを察した様子で、老臣は出て行く。未だ年若い仮面の男が把握しきれていない、機敏を感じ取って。仕えると決めた主の真意に応える為に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんにちは、いつもコメントありがとうございます♪こちらのページに載せられる話数があと少しなので、最終話＋後日ネタか裏設定、後書きで締めようと思っています。最後までお楽しみ頂けるように頑張ります(^-^) (2021年3月16日 12時) (
レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます！次回最終回さみしい&楽しみに待たせていただきます。 (2021年3月16日 1時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» こんばんは★コメントありがとうございます♪いよいよ佳境でございます。伏線を回収しきれるか、頑張れ自分(笑)状態です。 (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
blackpink(プロフ) - 更新ありがとうございます。引き込まれます！ (2021年2月1日 22時) (レス) id: 2e69ab6484 (このIDを非表示/違反報告)
黒那智(プロフ) - blackpinkさん» はじめまして、こんばんは★コメントありがとうございます。訪問＆コメント大歓迎です♪励みになります。 (2021年1月18日 0時) (レス) id: 2f3a90e586 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒那智 | 作成日時：2019年5月1日 12時
