跳んで歌って舞い上がれ【2】【剣盾】

87 ビーツの黙示録――11 ページ40

通話相手のソニア博士によれば早くナックルスタジアムへ向かえとのこと。この感じではビートとゆっくり談笑はできないだろう。

「では急いでナックルスタジアムに向かいますか」

　ネズの背中を追うように足を動かす。今はネズの言うことが絶対だ。当然ビートも理解している。

「……きっと今止めたところであなたは考えを変えない。また後ほど必ず言います」
「わかった。今は急がないと」




　私たちがナックルスタジアムに到着した時にはエネルギープラントへと扉は既に開かれていた。先に行ったユウリとホップ、それから待機していたソニア博士はここにはいない。
　壁に手を当て、ネズはいつもより瞼を開き私たち二人を見ている。

「アイツら……先に行きやがりましたね。
ネリネ、おれから絶対に離れないでください。ビート、きみもですよ」

　あくまでも私たちは守られる存在。それはもちろん分からないことも無い。しかし私もそうだが、ビートがそれを聞いて黙っている訳が無い。

「ハァ？ お言葉ですがネズさん、ぼくはエリートでありジムリーダーです。ちょっとやそっとでやられるとお思いで？ それにぼくもネリネを守ることはできますよ」
「いや、私守られるだけじゃないから。ちゃんと戦えるよ。とりあえずユウリたちに合流しようよ」

　鼻で笑ったネズをよそに、私は二人の手を容赦なく引っ張ってエネルギープラントへと進む。ユウリたちを信頼しているからこそ、こんな風に口論ができたがあのシーソーコンビとやらは嫌な感じがするのだ。




　その予感は的中し、青いスーツの……確か名前はソッドが後ろに六人の職種も異なるであろう人々を侍らせている。エネルギープラントの赤みがかったライトの光もあり、どこか不気味な雰囲気を感じさせる。

「おや？ おやおーや？ 扉のロックも開かれ、各地のスタジアムの騒ぎも解決されたようですね。さすがはチャンピオン」

　変わらない高圧的な態度でチャンピオンとしてのユウリを褒めるよう後ろの彼らに指示を出せば彼らは傀儡のように手や顔を動かす。作られた賞賛ほど気味の悪いものはない。ネズも顔を顰め毒を吐く。しかし向こうの彼らに効果はない。

　なぜポケモンをダイマックスさせたのかとホップが問い尋ねてもザシアンとザマゼンタの本性を暴くためという解答しか発さない。ザシアンとザマゼンタがガラルを救ったとこちらで反論すれば、堪忍袋の緒が切れたようにけたたましい声で言葉を並べる。

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