跳んで歌って舞い上がれ【2】【剣盾】

83 ビーツの黙示録――7 ページ36

それに両手を握りしめて振る様子は何だか可愛らしい。
　ネズは彼女をたいしたタマだと言って笑い声を漏らしている。
　ネズのあの表情を引き出せるのは私だけだったのに……。ネズはあぁいう人が好みなのかな。悔しかったのでネズのライダースの裾を引っ張る。

「こらこらネリネ、拗ねないで」
「別に拗ねてないし」

　ヤキモチなんかじゃないし、と言い聞かせても心のモヤモヤが晴れない。今はこんな気持ちになっている場合じゃないのに！ シーソーコンビがポケモンを蔑ろにしてダイマックスさせているのだから、そっちを早く解決しなければならないのに！
　ナックルシティ、ラテラルタウン、キルクスタウン、そして最後にアラベスクタウンの計四つのスタジアムで大きなダイマックス反応があるとソニア博士から報告があった。スパイクタウンはないようなのでほっと息をつく。というか、アラベスクタウンってビートがいるじゃん。

　シーソーコンビの足取りは博士たちが担当してくださるらしい。我々に残されたのはねがいぼしの悪用の被害をこれ以上拡大させないことだ。地理的にも考えてナックルシティにまず行くべきだと判断し、ブラッシータウン駅へホップ、ユウリ、私と足を踏み入れようとした時、ソニア博士が私の名を叫んだ。

「ネリネ、よね！ ねがいぼしを守ってくれてありがと！」

　わたしも頑張るから頼んだよ！ と大きく手を振って研究所の前に立っている。
　まさか礼を言われるなんて思ってもいなかった。でもここでようやく皆の力になれたようで密かに喜びを感じた。


▽

　ナックルシティ、キルクスタウン、ラテラルタウンとダイマックスを抑え、残りはアラベスクタウンのみとなった今、アラベスクジムに立ち入った。案の定そこにビートがいて、三人の鶴翼陣の中心に私がいたにも関わらず駆け寄って来る。

「ネリネ！それにあなたたち！」

　ファイナルトーナメント以来だね、と余裕があれば再会を喜んでいたところだが今はは違う。

「ビート、ダイマックスは？」
「ぼくが苦戦するとでも？ エリートでありフェアリータイプジムリーダーのぼくが？ あぁぼくは悲しいよネリネ。ぼくも力を付けているんだ。あなたと同じようにね」

　そういえばそうだったな、と隣でホップが呟く。
　ジムリーダーになった現在でもビートのこの物言いは残っている。それがとても懐かしくて、小さい頃に戻ったような気分になる。

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