跳んで歌って舞い上がれ【2】【剣盾】

82 ビーツの黙示録――6 ページ35

奇抜髪型セレブリティ兄弟、もといシーソーコンビはバウスタジアム、エンジンスタジアムでもポケモンをダイマックスさせてジムリーダーのお二人の手を焼かせていた。親の顔でも見てみたいとはこの事か。
　しかし事はネズたちによってすぐに収まった。ルリナさんに直接会えたことが嬉しかったのは私だけの秘密だ。

　ホップも徐々に普段のような輝きを取り戻しており、ようやく落ち着いたかと思いきや今度はポケモン研究所でねがいぼしをよこせとせびっているらしい。
　そう言われては黙ってはいられない。正義感に駆られ、ブラッシータウンへの道を急ぐ。

　ポケモン研究所に到着した時、さっきのこともあってかネズは私を決して背中から離さない。ネズの髪と背中に挟まれ、何だか不思議な感覚だ。
　ユウリとホップがシーソーコンビとバトルをしている最中、ふとポケットに入れたボールが微かに揺れた。取り出してみるとニンフィアが何か訴えている。

　ボールからこっそり出して尋ねてみればソニア博士の助手と見られる女性に明らかに威嚇している。イーブイの時から誰かに対して歯を見せるなんてなかった。ニンフィアが私たちには分からないものを感じとったのかもしれない。警戒するのに越したことはないだろう。
　ニンフィアに机上の大きなねがいぼしを守るよう指示をする。地の利もあって難なくそこまで辿りつくことができたようだ。怪しい動きがあればでんこうせっか、何も無ければあまえるでもしてオーケー。きっとニンフィアなら分かってくれる。

　勝負に決着がつき、しばしの間狼狽えるシーソーコンビをよそについに助手が動いた。ニンフィアを一瞥しただけで疑わしい行為はなかった。しかし彼女はシーソーコンビの前で古くから繋がりがあるように話しているではないか！
　はじめから裏切るつもりだった助手にソニア博士は動揺を隠せないようだった。ソニア博士は彼女のことを心から信頼していたようだったから、その辛さは目に見える。今はそっとしておいてやるために私たちは忍び足で研究所を立ち去った。

「ちょっと待ってよ！ 静かにでていっちゃってさ！」

　ソニア博士はとても強い女性だったようだ。落ち込み終了！ と自分の気持ちを切り替えられるのは芯のある人にしかできない。誰かが言った、多くの人の幸せを願う考え方。ソニア博士にはそういった精神力がある。

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