74 ポケットのおもいで ページ27
チャンピオンだった男は、王冠を投げ捨て、ただ空に手を掲げていた。ユウリを褒め讃えるその姿は、人々の視線をひとつにした。悲しみや喜びといった相反する響めきが一人の人間に集約している。彼はようやくポケモントレーナーになれたのであった。
会場にいる全ての人間に向けて、ダンデさんは声を張り上げた。
「未来に繋がる今を、大人がよくしてくれる」
私とビートは大人の汚く、卑劣な行いを少なからずあの施設で見てきた。過去の思い出の中には記憶から消したいこともあるのだ。私は、もう大人を信じていいのだろうか。彼らはいつも目先の利益を求め、下劣な行為も厭わない。
でも、全ての人がそういうことをしないというのも私は知っている。私を変えてくれた、大切な人はどんな時も私のそばにいた。心も身体も。私にとってネズは誰よりも大切な人だ。
「ネリネ」
私の名前を呼ぶビートはユウリたちから目を離してはいなかったが凛としていた。彼は利用されていた人間の一人だ。誰よりも痛く感じられるはずだ。
ビートは何も言わない。横から見る瞳は昔よりも眩い光を灯していた。信じる道を見つけ、新たな仲間との競い合い。それを助長させたのは、間違いなく周囲の大人だ。
鋭いビートのことだから、私の考えなんて見抜かれていたのだろう。だからあの時何も言わなかった。
「ぼくの言いたいこと、分かってくれましたか?」
視線を私に投げかけ、ビートはふと笑顔を見せた。ほらね。あなたはいつだって私のことを一番見ている。
背中で息を吸う音が聞こえた。十中八九マリィだろう。
「うん。私も前に進まないといけないね」
昔、といっても数ヶ月前、ネズは大人を信じろと私に言った。過去を隠したところでネズにも何もかもおみとおしだったのだろう。ビートとネズは似ていないようで似ているから。
前進するのはもう少し先。今はこの時間を感じていたい。この後は私の自慢のポケモンがトリを飾るんだから。
「ネリネ! ほら出てきた!アニキたちのストリンダーにニンフィア!」
マリィが私の腕を引っ張るとセンターには、堂々としているポケモンがいた。日々成長しているのは私たちだけじゃない。もちろんあの子たちもだ。
さぁ!最後に最高のライブにしてやろうぜ!
アナウンサーが叫喚すると、会場は炎に包まれたかのように熱くなった。
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伊万里(プロフ) - 星猫さん» 申し訳ないですが知らないアニメですね。 (2021年4月5日 0時) (レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - トランスフォーマープライムは知ってます? (2021年4月3日 21時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
伊万里(プロフ) - 星猫さん» REBORN、天デ部、アニポケ、ヘタリア、ジョジョ、SideM、ドクストとか色々あります。今パッと思いつくのでこれくらいですが多分もう少しありますね。 (2021年3月27日 21時) (レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 伊万里さん» 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月27日 16時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
銀狼&銀狐(プロフ) - 伊万里さん» ポケマスのI.D.です! 1210-0027-9994-1592です!!このI.D.をポケマスで友達検索のところでうってくれれば友達なれます!! (2020年7月15日 18時) (レス) id: d5e2916806 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊万里 | 作成日時:2020年3月6日 9時