72 不揃いのワルツ* ページ25
それはビートが見せた小さな独占欲であった。ネリネが見てきた中で、ビートは滅多にネリネに要求しなかった。決定権は全て彼女にあり、それをありのまま享受する形がほとんどだった。
今はどうだろうか。熱っぽい視線でネリネを見つめる彼の中には黒く、ねっとりとしたものが渦巻いているように見える。ネリネはまだ、その正体に気づけていない。一番近くにも黒いモノがあるのいうのに。嗚呼、なんと哀れな。
「ビ、ビート? 本当におかしいよ。痛いし……離して……」
ネリネにグッと近づいて肩を掴むビートはやけに笑顔で、それが不気味さを醸し出していた。
彼女に指摘されてようやく手を離したビートは少しの間、表情が無かった。
「すみません、つい力んでしまいました」
大丈夫ですか、と言うビートはいつも通りであった。ついやっちまった、のレベルの力ではなかったから、文句の一つでも口にしてやろうかとネリネは思ったが、ビートの申し訳なさそうな表情を見ると何も言えなくなり、心の中に閉まっておくことにした。ネリネは昔からビートのこの表情に弱かった。
「さっきの話、だけど」
ネリネの声が聞こえると目を大きく見開いてじっと見つめていた。
「私も、ビートと一緒にいたい。でも、私にはあなたと同じくらい、大切なものができたの。
そうだ、これが終わったらスパイクタウンにおいでよ! 私たちのこと、ビートに知ってほしいな」
その誘いは本心からの好意であった。醜悪なものではなく純粋なもので、ビートはその光に当てられ、何も言えなくなった。自分のその考えを一瞬恥じた。彼女は本当に恵まれた環境でのびのびと育ったのだと悟った。
「いつか、会いたいものですね」
あなたの大切なものとやらに
「ええ! 落ち着いてからでいいわ!」
じゃあ、ホテルに戻りましょう、とネリネは立ち上がり、ビートに片手を差し出していた。背後のブラックナイトと彼女の明るさは均衡が取れていない秤のようだった。
73 勝負の時間よ 終わらないで*→←71 まほうのこなが無くたって
107人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
伊万里(プロフ) - 星猫さん» 申し訳ないですが知らないアニメですね。 (2021年4月5日 0時) (レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - トランスフォーマープライムは知ってます? (2021年4月3日 21時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
伊万里(プロフ) - 星猫さん» REBORN、天デ部、アニポケ、ヘタリア、ジョジョ、SideM、ドクストとか色々あります。今パッと思いつくのでこれくらいですが多分もう少しありますね。 (2021年3月27日 21時) (レス) id: 8155f27608 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 伊万里さん» 知ってるアニメは何ですか? (2021年3月27日 16時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
銀狼&銀狐(プロフ) - 伊万里さん» ポケマスのI.D.です! 1210-0027-9994-1592です!!このI.D.をポケマスで友達検索のところでうってくれれば友達なれます!! (2020年7月15日 18時) (レス) id: d5e2916806 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:伊万里 | 作成日時:2020年3月6日 9時