跳んで歌って舞い上がれ【2】【剣盾】

50 これ以上 夢中に させないで ページ3

『ご乗車ありがとうございました。間もなく、終点、シュートシティ、シュートシティでございます。お忘れ物をなさいませんようご注意ください』

長かった電車の旅にピリオドが打たれる。車掌のアナウンスがようやく聞こえた。途中でホワイトヒル駅で降車した人が何人かいたけれど、トレーニングでもしていくのかな。私は行ったことないけど、ちゃんと防寒対策していかないと無理だと思う。

「ネリネ、降りますよ」

窓から入る夕日を浴び、私はネズに手を引かれシュートシティ駅に降り立った。

***
「うわーー、もう夕方だねぇ」

太陽はヒメリのみ色に染まっており、西に沈みかかっている。駅の外にはこれから遊びに行くであろう若者たちがたむろしている。

「今日はもうチェックインしてホテルで食事を摂りましょう」

そういや、ネズが夜何処かに行くことって本当に無いな。たまーにジムリーダーとチャンピオンに捕まって飲みに行くっていうのはあったけど。考えるを巡らせると、足取りが重くなってしまった。
不思議に思ったネズが私の顔を覗き込み、垂れ目がちな瞳と目があった。あ、今日はアイシャドウしてないんだ。

「ネズはさ、今満足してる？」

私は、あなたの枷にはなりたくないんだ。

「もちろん。おまえがいてくれて、おれの表現の幅は広がったし、歌声を重ねるときは生きている実感も湧きます」

ゆっくりと頭に触れるネズの面貌はいつにも増して穏やかで、私の考えを見透かしているような気がした。

「ごめん、変な事聞いて。……私もネズと一緒で楽しいよ」

拍子抜けした顔を見せたが、すぐに口を真一文字に結び、私の手を導き再び足を進めた。

ネズの顔をちらりと見てみると、口角が上がっているように見えた。

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