跳んで歌って舞い上がれ【2】【剣盾】

65 ローズマリーの研究論* ページ18

ネリネは頷くと、ぽつぽつと話し始めた。

「ビートは、今の私を形成した人物の一人なんだ」

　ちなみにネズもその一人だよ、と言うネリネは懐かしむように笑っている。あたしもずっとアニキといるから、ネリネと似ているのかもしれない。

　ビートのことについては薄々そうだとは気づいていた。ネリネは気づいているかは分からないけど、『アレ』は口には出さないけど行動で気持ちがバレバレになっちゃうタイプだと思う。『コッチ』はちょっと面倒な類の人。ソースはあたし。本命になると手が出しにくいんやろうね。

「でも、驚いちゃったなぁ。ビートって私と一緒じゃないとすぐに喧嘩しちゃってたんだよ。でも今は私がいなくても、人と接することができるようになったんだね」


　たまにネリネが遠い人のように感じることがある。物理的な距離の問題じゃあなく、ネリネが持つ雰囲気がそう思わせるのかもしれない。彼女自身は明るく、親しみやすいが、ある時は高貴な印象を持たせる。

「ん？マリィ、どうしたの？」
「アニキがあたしのかたきうちしてくれるかなぁって」

　嘘はついていない。ファイナルトーナメントでアニキにあたしのリベンジを頼んだのだから、負けてもらっちゃ困る。「私たちがネズを信じなくてどうすんのよ」なんて頬を膨らませて言う彼女からは先程述べたイメージなんて想像がつかない。あたしの気の所為なのかも。

「後で控え室に向かうけど、ネリネも一緒に来る？」

　さっきは断られたけど今度は遠慮がちに応えてくれた。やった。

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