150episode 迅悠一�� ページ8
Aside
ふーっと息を吐いてから、迅さんが窓の外に視線を向けた。
「……それ太刀川さんにでも言ってあげなよ、おれじゃなくてさ」
「……わかってます、迅さんが私のことすきじゃないってことは」
「…………」
私は視線を一度白いシーツに落として、それからまた迅さんの耳の後ろに視線を向ける。
「……私は迅さんがいなかったら今ここにいない、迅さんが助けてくれたから、今生きてる」
「けどお前は生きてるのが辛いんでしょ」
迅さんの声が少し冷たく返ってきて、私は思わずギュッとシーツを握る。届かないかもしれない、私の言葉なんてこの人には。それでも、
「生きててよかったって、今は思えるから」
だから、だから、
「ありがとう迅さん、」
私を生かしてくれて、私の暴言だって押し切って生かしてくれて、ずっとそこに居てくれて。
迅さんにとっては私を救ったわけじゃなくて、世界のためだったとしても、それでも私は救われたから、非情だなんて言わないで。
「……すきです、迅さんも、迅さんの
私だけじゃない、きっとそう思ってる人はたくさんいる。迅さんが殺した人の数だけ、迅さんに救われた人もいるんだって、思い出して欲しい。
迅さんの視線は相変わらず窓の外の雨で、やっぱり私の言葉なんか届かないかもしれない。
私は一度また、白いシーツに視線を落とす。
と、不意にそのシーツに影ができて、顔を上げる前に、とさ、と何が肩に触れた。
見ると、迅さんが私の肩に額を置くようにして顔を埋めていた。
私は一拍遅れて目を見開いた。
「……あー……ちょっと、……ちょっとだけ、このまま」
迅さんのそんな声が肩からして、私は驚いた顔のまましばらくそれを見つめて、それから白いシーツへと視線を移動させた。
はじめてだ。この人の弱いところをみたのも頼ってもらったのも。いつも一方的に私が支えられていたから。
私は軽く震える行き場のない手を、ゆっくりその青いジャケットの背中に遠慮がちに添えて、ぽん、ぽんと軽く叩く。
そうだ、いつも迅さんが、そうしてくれていた。
「…………おれ子どもじゃないんだけど」
不意にそんなくぐもった声がした。
「……そうですね」
そう答えておきながら手は止めなかった。
迅さんもそんなに追求する気はないのか、何も言わずに、数秒の間の後に口を開く。
『……ちゃんと届いたよ、お前の言葉』
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ゆう - とっても面白いです！！更新頑張ってください！！ (2023年1月29日 15時) (
レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます！ (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました！続きまってます！無理なさらずがんばってください！！ (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬野
| 作成日時：2015年7月19日 21時
