148episode 心配 ページ6
Aside
それからはもうなんというか。
「無断で病院を抜け出すなんてなに考えてるんだ。万が一のことがあったらどうする。あまつさえ訓練室で戦闘なんてもってのほかだ」
風間さんの前で正座して、ずらずらと並べられる説教は確かに正しいから言い訳する余地もない。
隣の太刀川さんも正座したまま、多分足の痺れに耐えている。私は怪我云々でトリオン体だからいいものの、この人は生身だ。
最後には忍田本部長まで出てきて説教されたから、本当に申し訳ないことをしたと反省した。(私の人生でまさか本部長に説教されるときがくるなんて微塵も思ってなかった)。
お咎めを受けた小さな会議室を出ると、はー……っと太刀川さんが大きなため息をついた。
「忍田さんほんっと説教長いんだよな」と呟く太刀川さんを見ながら、成人しても結構な頻度で説教されているであろう文面に、本部長も大変だなと思う。
「瀬野!」
急に名前を呼ばれてそっちを向くと、米屋が真っ青な顔で走ってきていた。出水と三輪もいる。
なにか言う前にがしっと米屋に両肩を掴まれた。
「えっ、なに、」
「お前出るなら一言言えっての!! どんだけ探したと思ってんだよ!」
その言葉に私は目を見開いて、米屋は少しの間私を睨んでから、はーっと息をついた。
「まあ無事でよかったけど」
米屋はそう言うと、私の肩から手を離す。今度は出水が太刀川さんに口を開いた。
「太刀川さん、あんたちょっとは常識考えてくださいよ」
「そんなこと言われてもなあ」
太刀川さんはそう言って、さっきの説教のダメージはどこへ行ったのかはははと笑う。
米屋の肩越しに三輪を見ると、眉間に少しシワが寄ったままだが、はーと小さく息をついていた。
……三輪も探してくれていたんだろうか。
驚いて呆然と三輪を見つめていたら、ぱちっと目が合ってしまって慌ててそらした。
◆
病院までは唐沢さんが車で送ってくれた。付き添いで太刀川さんも。
さすがに本部外で戦闘でもないのにトリオン体でいるのはまずいし、体への負担も少しはあるかもしれないからと、生身に戻った。
病室まで太刀川さんが送ってくれて、「今日は悪かったな、連れ出して」なんて全然悪いと思ってない顔で言われた。
カチ、カチ、カチ、と秒針が刻む音がする。午後8時46分。
私以外誰もいない病室は静かで、まだ降っている雨の音が微かに聞こえる。
ガラッと扉の音がした。
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ゆう - とっても面白いです!!更新頑張ってください!! (2023年1月29日 15時) (レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます! (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました!続きまってます!無理なさらずがんばってください!! (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬野 | 作成日時:2015年7月19日 21時