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146episode 心臓 ページ4

三輪side






放課後訪れた病室で、俺は数回ぱちぱちと瞬きすることになる。

「…………いない……」

俺の呟きにはっと我に返ったのか陽介が、ガラッと扉を全開に開けて中に入った。

「あいつどこいって……!?」

陽介が白いシーツをめくってみるがもちろん空。

「つーかあいつ両足怪我ってたのにどこ行けんだよ」

出水が少し焦ったような怒ったような声で言う。

何かあったのかもしれない。いやこの雨の中あの怪我で外に出たのだとしたら、大丈夫で済む話じゃない。

嫌な汗が背中を滑った。

昨日のあいつは、多分大丈夫じゃなかった。まさか、


バッとスマホを取り出すが、俺は瀬野の連絡先を知らない。

「陽介、」

陽介が振り向いて、それから俺を見て理解したのかすぐに学ランから自分のスマホを取り出す。

「……あの足じゃどこにも行けねーからトリオン体に換装したのか……?」と俺の隣で出水がぶつぶつ呟く。

「……だめだ出ねー」

陽介がスマホを耳から離して言った。




◆◇◆◇◆

Aside






まずは首。その次は心臓。胴体、右腕、両足、左腕、頭、そんでまた首。


もう何百回と繰り返されたそれは、痛覚はある程度感じないようになっているはずなのに、数日前の生身で受けた攻撃と同じくらい痛かった。

「っ、……」

胴体を横に真一文字に斬り裂かれて、顔をしかめて痛みに耐えたが、すぐに胴体は元に戻る。

訓練室。仮想戦闘モード。

ランク戦とは違ってトリオン切れはない上に一回一回ブースに飛ばされることもないから、さっきから何時間も何百回も、連続で。

何回も何回も、私は太刀川さんに殺されている。


心臓に弧月が突き刺さった。

さっきからトリオン供給器官ではなく心臓を突いてくるのはなにか意味があるのか。

どさっと気づけば私は地面に膝をついていた。ぜーぜーと肩で息をする。

ヒュンッ、と切っ先が見えてとっさに身を引く。

弧月の切っ先が私の喉にあって、ちく、と小さく刺さった。

見下ろす太刀川さんは、どんな顔なのか、逆光でよくわからなかった。


す、と切っ先が離れて、私は途端にげほげほと咳き込んだ。

太刀川さんがその黒い隊服の腰に引っ掛けた鞘に、弧月を納めた。


「…………わかんないもんだな」

太刀川さんは咳込む私を見下ろしてそう独り言のように呟いて、それから私と同じ目線にしゃがみ込んだ。

すっと手が伸びてきて、太刀川さんの手は私の左胸に触れた。

「聞こえないよな、なにも」

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ゆう - とっても面白いです!!更新頑張ってください!! (2023年1月29日 15時) (レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます! (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました!続きまってます!無理なさらずがんばってください!! (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬野 | 作成日時:2015年7月19日 21時

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