【ワートリ】咲かない花。4【三輪秀次】

159episode 相談 ページ17

Aside







冬島さんに呼ばれた方へ足を運ぶと、病院のCTスキャンのような機器が目に付いた。

「ここに横になる。前調べたときより詳しく調べたいからちょっと時間かかるかも」

「……わかりました」

私は冬島さんに言われた通りその台のようなところに乗って横になった。『前よりも詳しく』……遠征のことがあったからか。

「じゃあいくぞ」

冬島さんの声がして、ヴー……と私が横になっている台が動き出した。




◆



出水side






「出水、」


ランク戦のブースへ向かう通路。そこで普段あまり聞くことのない落ち着いた声に名前を呼ばれる。

振り返るとそれはよく知る人物で、でも少し珍しい声だと思ったのにも納得いく人物。

「奈良坂じゃん、どうした？」

おれの言葉にそいつは「ああ、」と短く答える。それからどこか考えるように一瞬視線を地面にそらした。その誰でもやりそうな仕草でも、奈良坂がやると洗練された動きに見えるのは、やっぱ顔かな。

「出水、少し聞きたいことがあるんだ」

奈良坂の顔を見つめながらそうどうでもいいことを考えていたら、その口から珍しい言葉が漏れる。

「聞きたいこと？ おれに？」

珍しい。奈良坂とは同い年とはいえ、隊も違えば学校も違う。おまけにポジションも。話すときは大抵米屋か三輪がいたはずだ。更に言えばうちは狙撃手がいないから、わりと狙撃手自体との関わりも薄い。

それなのにその奈良坂が、米屋も三輪も挟まず個人的におれに聞きたいことがあるという。業務連絡でもなく、聞きたいこと。

「出水？」

「えっ、お、わり、なんだって？」

そうだそんなことは今どうでもいい。とりあえず奈良坂の話を聞こう。

「ああ。……大したことじゃないのかもしれないが少し気になって……陽介と三輪のことなんだが……」

「槍バカと三輪？」

喧嘩でもしたのかと言いそうになったけど、まさかあのふたりが喧嘩するなんて想像もつかない。

「今朝から様子がおかしいんだ。うちの隊は今日早朝に任務だったんだが、なんとなく考え込んでいるというか」

「考え込んでる？」

「ああ。……三輪だけなら陽介に聞くし、陽介なら三輪に聞くんだが、ふたりともとなると俺ではわからなくて、一番知ってそうなおまえに」

なるほどとは思ったけど、今ぱっと思いつく理由はない。今日はまだふたりに会ってないし。……けど、

「……瀬野」

おれが呟くと奈良坂がおれを見た。


「瀬野と、なんかあったのかもな」

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