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153episode 感情の推移 ページ11

Aside






病室は驚くほど静かだ。

それもそうかもしれない、早朝まではいかないがまだ朝も早くて、患者が活動する時間じゃなさそうだ。

ここ数日雨ばかりだったから、止んだらやんだで雨音が聞こえなくて寂しい気もする。

それも昨日の今日だからかな、今はなるべくうるさい方がいい。

「……い、おい瀬野、……瀬野」

はっと顔をあげれば、朝のぼんやり白い光が三輪を逆光で照らしていた。

「あ……なに、」

「俺が押す」

「あー…………え、」

もともと違う方向へ行ってしまっていた意識が止まった。

三輪はちらりと私の右腕を見て、それから車椅子の後ろのグリップに手を添えた。

「いや自分で進める……」

「腕も怪我してるんだろう」

三輪の声が後ろでして車椅子はゆっくり進みだした。私は呆然と口を開けたまま。

……なんなんだ、だって、三輪は、私がネイバーの世界にいたって、知ってるんでしょ……?

最近の三輪はただでさえ私の知っている三輪じゃなくて、それなのに私のことを知ってもこんな、……私の想像していた態度じゃない。

わからなくて頭を抱えて、それでも多分、その優しさは三輪の底にあるものなのだろうなと、それだけはわかった気がする。









屋上には少し風が吹いていた。

冬どきのからっとした風。空は晴天まではいかなくて、昨日の雨の名残か雲が割と多かった。


「…………」

「…………」

飛び降り防止フェンス越しに、三門町が見渡せる。少し離れたところには、ボーダー本部も。


『逃げないで、ちゃんと向き合ってやりな』


「三輪、」

昨日の迅さんの言葉は、きっとこういうことだったんだ。……迅さんは、本当によく私の動かし方を知ってる。



「私はネイバーの世界にいた」



後ろで三輪が息を詰める音が風に混じって聞こえた。

許してほしい、後ろを向かずに三輪に背を向けて車椅子の足元を見つめてしか言えない私を許してほしい。

怖い、怖いんだ。いつのまに三輪に対してもこんな感情を抱くようになってしまったんだろう。

三輪には、最初から私を嫌っている三輪には、なんて思われても平気なはずだったのに。

「………………お前は、ネイバーなのか……?」

「…………違う、けど、……同じことをやってきた」

私は向こうの世界に連れ去られて、そこでたくさんの人を殺して、それでまたこっちに戻ってきたんだ。

そう言った私の声は震えていて、喉の奥が上ずってなんだか泣きそうになった。

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ゆう - とっても面白いです!!更新頑張ってください!! (2023年1月29日 15時) (レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます! (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました!続きまってます!無理なさらずがんばってください!! (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬野 | 作成日時:2015年7月19日 21時

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