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144episode 揺れる ページ2

三輪side






「…………」


流れていた音が言葉だとわかった。

それから段々黒板とチョークが擦れる音だとか、ノートをとるシャーペンの音だとか。もろもろが意味を持って脳を刺激した。

重い瞼を開けるとアルファベットが並んだノートがあった。

途中からぐちゃぐちゃで自分でも読めない字になっている。


そうか、寝てしまっていたのか。


まだ少しぼーっとする頭で考える。時計を見るとあと5分で授業が終わる。

それにしても、案外気づかれないものなんだな、なんて思ってから、もしかしたら普段寝ることなんて滅多にないから教師も周りも気を使ってくれたのかもしれない、と思い直す。


『あんたはネイバーを憎んでる……?』


夢を見た。

あれは確かに事実経験したことで、それなのに今まで一度も思い出したことがない思い出だった。

俺の中のあいつは初めから『ネイバーを憎んで仲間割れしてる方が馬鹿らしい』という玉狛の派閥よりの考えをしていたはずだ。

だから気づいたときにはあいつとは仲が悪かったし、ずっと周りもそう認識していたに違いない。


……でも確かにその言葉は事実だったんだろう。

夢の中の瀬野は、昨日のあいつとよく似ている。

…………。

昨日の光景がぐるぐる回って昨晩は眠れなかった。今も、やっぱりその白い病室が浮かぶのだ。

今まで女子を抱きしめたことなんてなかったし、いや、男でもないような気がするが、まあいい、そうじゃなくて。

こんなに小さかっただろうか。

というのが素直な感想。俺の知っている瀬野とは、全然、正反対な印象しかなかった。

そもそもあいつが、泣くところなんて見たことがなかったのだ。


ぐるぐるぐるぐる、また昨晩と同じ思考が回って回って。

ひとりで考え込んでも答えは出ないだろうというのは、昨晩の時点で思ってはいる。だけどこんなこと、一体誰に話せばいい。

だってあいつは……


近界民(ネイバー)……。



キーンコーンカーンコーン。チャイムが響いた。

結局埋まることのなかったノートの空白半分を見つめて、俺は机の上の拳を握った。

姉さんを殺したネイバー。

それに抱く感情はこの先一生忘れることはないし……、

窓に視線を向ける。

雨が降るたびその感情は膨らんで、記憶を修復して鮮明なままを保っていく。


ぎりっ、と奥歯を噛んだ。

ネイバーはすべて敵、そんな単純明快な理念のもとずっと生きていたのに、ここのところそれを揺るがすものばかりだ。

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ゆう - とっても面白いです!!更新頑張ってください!! (2023年1月29日 15時) (レス) @page17 id: 619c9e8827 (このIDを非表示/違反報告)
鈴音 - すごい素敵です…更新ずーっと待ちます! (2022年3月6日 22時) (レス) @page17 id: 57ecee7250 (このIDを非表示/違反報告)
誕生日肉 - 米屋への対応と三輪とのこれからが気になります… (2021年5月31日 13時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 良すぎて言葉になりません。 更新楽しみにしています。 応援してます。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 52a662140b (このIDを非表示/違反報告)
柚さん - 面白くって最初から一気読みしてしまいました!続きまってます!無理なさらずがんばってください!! (2018年11月26日 23時) (レス) id: d92082f045 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬野 | 作成日時:2015年7月19日 21時

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