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「ほんとに何もねーな。」

「そうですね。」

「ちょっと休むか?」

さっきから30分くらいずっと歩き続けているが、何も見つからない。
どこまでも何も無い空間が続いている。

そういえばさっき、歩きながら考えていたら、1つだけ思い出したことがある。
私がここに来る前に最後にしたこと。

私が最後に自分の部屋にいたのは夜だった。
そこで、寝る前に本を読んでいたのだ。

それが今ここにいることと関係あるかと聞かれたら答えることはできないが、何も分からないよりは良いだろうと思ってキヨさんに話してみた。

すると、「どんな本を読んでたかは思い出せるか?」と聞かれた。
私は非現実的な小説とかを読むのが好きだから、多分ファンタジー系とかではないか。
そう言うとキヨさんは黙って何かを考え始めた。
そして、「夢、とかは見てないのか?」と言った。

夢か。
テレビか何かで見たけど、直前にあったこととか印象に強く残っているものとかは夢に出てきやすいらしい。
まあ、夢なんて見たらすぐ忘れちゃうから意味無いけど。
ただ、うっすらとなら記憶が残っている。

「不思議な夢を見ました。内容はよく覚えてないですけど。」

「不思議な夢ね。あ、そうだ。俺も変な夢を見た気がするんだよ。霧がかかった森の中で誰かと話しているみたいなやつ。」

「…え…」

おかしいな。
キヨさんの言っている夢の内容が凄くはっきりと思い浮かぶ。
私も、その光景を知っているのかもしれない。
もしかしたら、と思い想像したものとキヨさんの夢が同じかを聞いてみる。

「霧って、紫っぽい色じゃなかったですか?」

「え、そうだけど、何でだ?」

何で、か。
理由は思い浮かんではいる。
多分合っている。

私の見た夢が彼の夢と一緒だったのだろう。


そうだ、思い出した。
紫色の霧がかかった森の中で、私は、背が低くて声が比較的高めの人と話している夢を見た。
もしかしたら、私の横にいたあの背の高い人は、キヨさんだったかも。
…でもそこにはもっと人がいたはず。
私達だけではない。



「…あれ?もしかしてお前、俺と会った?」

おお、どうやら貴方も同じことを考えていたみたい。

「会いましたよ。」

きっと、いや、絶対にあの人はキヨさんだから、私はそう答えておく。

「きっとまだ何人か人がいます。もう少し探しましょう。」

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作成日時:2019年3月13日 22時

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