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「泣くなよ。」
ハッとして顔を上げると、飛雄くんとバチりと目が合った。
「な、泣かないよ!」
「泣きそうになってただろ。」
「なってないよ!」
なんで飛雄くんはこうも鋭いのか。
まだ目頭が熱くなった程度で涙は滲んでなかったはずだ。
ムキになって言い返すも、飛雄くんは確信しているようで飄々としてお味噌汁を啜った。
わかっている。ここで私が泣くべきじゃないことくらい。ただ少し、しんみりしてしまっただけで。
私がここに誘って貰えた理由は、きっと仲間だから、だと思う。自分で言うのは恥ずかしいけど。
何かを言わなければ、と思っていたけど、今思えばそんなことは烏滸がましくて。
きっとこの結果を、この瞬間を、一緒に噛み締めるために呼んでくれたんだと思う。
だからとても嬉しかったんだ。
その後は、烏野の皆と楽しくご飯を食べて、試合での活躍を教えてもらったり、私の近況を伝えたり。高熱が出てしまった日向くんの部屋にも顔を出して、そうこうしているうちにあっという間に戻らなければならない時間になってしまった。
「A!」
玄関で靴を履いていると名前を呼ばれて振り返る。そこにいたのは3年生の先輩たちだ。
キャプテン、菅原先輩、東峰先輩、清水先輩。わざわざ見送りに来てくれたのだろうか。そう思い笑顔を浮かべる。
「ありがとな。」
「え、」
夕食に誘ってくれてありがとうございました。と言おうとした矢先、キャプテンから掛けられた言葉に驚いた。
先輩たちはそれぞれ笑顔を浮かべて私を見ている。間違いなく、私に向けられた感謝だった。
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しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2022年10月10日 21時